取材・文/沢木文
仕事、そして男としての引退を意識する“アラウンド還暦”の男性。本連載では、『不倫女子のリアル』(小学館新書)などの著書がある沢木文が、妻も子供もいる彼らの、秘めた恋を紹介する。
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今回、お話を伺った、浅岡浩史さん(仮名・61歳)は、大手化学メーカーの研究職として1年前に定年を迎えた。
【その1はこちら】
知的な人々と知り合い、交流が始まる
都内の書店を巡りながら、ある人気エリアにあるオシャレな本屋さんで、読書サークルの張り紙を見つけた。
「“読書会”と聞いてもピンと来なくて、スタッフの人に『これは大人が子供に絵本を読んであげる会ですか?』と聞いたら『違います』という。なんでも、大人が集まって、同じ本を読み、感想や解釈を述べ合うとのこと。若い人しか参加していないのかと思ったら、30~70代の参加者がいるそう。どんなものか知りたくて、さっそく申し込んだよ」
読書会の課題図書は、人気女性作家の最新刊だった。
「それまで、女性作家が書いたものがどうも受け入れられなくて、手が伸びなかったんだけれど、読書会のために購入して読んだら、本当に面白くてね。書斎にこもって夢中で読み、ドキドキしながら当日を迎えた」
都内のカフェの個室で行われた読書会の参加者は、浅岡さん含め7人。30~60代の男女が参加していた。
「とても穏やかで楽しい会だったし、皆さん知的でね。どんな意見も受け入れてくれて、一緒に考えて、楽しかった」
浅岡さんは見た目にも清潔感があり、笑顔が多い。頭髪は寂しくなっているものの、短く切りそろえてあり、シンプルな白のボタンダウンシャツと、デニムがよく似合っている。服も眼鏡もファストファッションで、娘が見立てたものだという。
「読書会に参加してから、図書館に行くのも楽しくなった。月に1回、4回目に参加した時、3人の40~50代の女性から、『終わったら飲みに行きませんか?』と誘われたんだよね。その中に、彼女がいたんだ」
【新たに出会った恋人は一回り年下のバツイチ女性。次ページに続きます】