今年も恒例のボジョレー・ヌーヴォ解禁となりました。が、先日のパリでのテロを受けて、今回はカウントダウンパーティなども乾杯ではなく献杯とするなど、犠牲者の方たちへの哀悼の意を表しながら味わうという状況となっています。ワインなどを通じて、フランスを支えたいという方もいらっしゃることでしょう。
ヌーヴォ解禁よりも前に、同じフランスのラングドック地方のイベントが開催されました。ラングドックは、フランス南西部に位置するワイン産地です。比較的価格も手頃で、日常的に楽しめるワインとして知られますが、かつては重い赤ワインが多いという印象がありました。
その新たな魅力をひもとくために、フランス現地のラングドックワイン委員会の人が来日しました。
ラングドックは、フランスのワイン生産量のうち約3分の1を産出する一大産地です。その中でも、ぶどうを有機栽培する生産者が多く、畑面積のじつに32%を占めます。その有機ぶどうの畑面積の割合もまた、フランス国内第1位です。その理由としては、暑く乾燥した気候でぶどうが病気にかかりづらいこと、意欲的な生産者が多いことが挙げられます。
そのラングドックで今、白ワインの魅力が見直されつつあります。たとえばリムーの白は花の香り、ピクプール・ド・ピネは桃や洋梨などの果実、ラングドック・ブランは時にアーモンドの味わいが感じられたりと、たとえワインの知識がなくても、素直に「美味しい」と思える魅力に満ちています。
さらに今、ラングドックの中で最も話題なのが、ラ・クラープという産地のワインです。2015年収穫のぶどうで造ったワインからAOC(原産地統制名称)が認められ、ワイン名に「ラ・クラープ」と冠することができるようになりました。
ラ・クラープの産地は標高200m、地中海を遥か眼下にするナルボネーズ自然公園の中にあります。海に近いため潮風に乗って塩分が運ばれ、また石灰質土壌のためミネラル豊かで、生き生きとした味わいに仕上がります。
ぶどう品種は、白はブール・ブランやグルナッシュ・ブラン、マルサンヌ、ルーサンヌ、赤はシラーやグルナッシュです。近くには野生のハーブも多いため、ラ・クラープのワインに合わせる料理も、ハーブを使うと共通点が出てきます。タイムやローズマリー、ローリエを使ったトマト・ファルシィやラタトゥイユだと、家庭でもワインとともに手軽に楽しめます。
またフランス・ニースで一ツ星レストランを持つ日本人シェフ、松嶋啓介さんの表参道店『KEISUKE MATSUSHIMA』では、ラングドックワイン全体に合わせる、様々な料理を提案してくれました。
タラのコロッケであるブランダード、さらにはムール貝、牡蠣、烏賊、オマール海老などがふんだんに供され、海に近いワイン産地のため魚料理とも好相性だとわかります。
肉はやはりこの地の名産の鴨、それにハーブを添えた羊料理なども絶品です。
比較的、手に取りやすい価格帯のラングドックワイン。年末、友人たちとパーティなどを開くなら、白赤両方揃えて話題にしてみるのも楽しいかもしれません。ご家庭なら白身魚の刺身を塩とオリーブオイルで食したり、牡蛎フライにソースではなくタルタルソースを添えると白ワインには合わせやすいと思います。
赤ワインに合わせる肉料理なら、子羊や牛肉にハーブと塩を振って焼いてもいいし、ちょっと奮発して、すき焼きでも楽しめると思いますよ。料理が面倒なら、タレで焼かれた焼き鳥を買ってくれば、気楽な夕食の共にもなってくれるはずです。
文/鳥海美奈子