取材・文/池田充枝
2019年4月30日、天皇陛下が御退位されます。御即位から30年、この記念すべき年に特別に開かれる展覧会を紹介します。(4月29日まで)
本展は、宮内庁が所管する皇室ゆかりの作品や、天皇皇后両陛下が海外御訪問の際にお持ちになって紹介された作品などを展示します。
また本展には、皇居東御苑内、大手門近くに位置する宮内庁三の丸尚蔵館から多くの所蔵品が出品されます。三の丸尚蔵館は、皇室に代々受け継がれた絵画・書・工芸品などの美術品が平成元年(1989)に国に寄贈されたのを機に、これらを環境の整った施設で保存・管理するとともに調査・研究を行い、一般にも展示公開することを目的として平成5年(1993)に開館しました。現在約9800点の美術品を所蔵し、テーマを設けて公開展示しています。
本展の見どころを、東京国立博物館の調査研究課長、今井敦さんにうかがいました。
「本展では、冒頭に平成2年(1990)秋に挙行された大嘗祭に際して調えられた儀式用の屏風である「悠紀・主基地方風俗歌屛風」を展示します(悠紀:3月5日~31日、主基:4月2日~29日)。当時日展の重鎮であった東山魁夷と高山辰雄がそれぞれ秋田と大分の風景を描いた力作です。
天皇皇后両陛下は、外国御訪問の際に、宮内庁が所蔵する日本の古美術品を携えて御紹介されてきました。平成10年(1998)の英国、平成17年(2005)のノルウェー御訪問のおりに公開された岩佐又兵衛筆「小栗判官絵巻」(会期中巻替えあり)などを展示します。
また、近代以降の歴代皇后陛下は、日本の伝統産業である御養蚕を手掛けてこられました。
「養蚕天女」(展示:3月5日~31日)は、日本の近代彫刻を牽引し、帝室技芸員でもある高村光雲(1852-1943)が彫った養蚕の女神の像です。皇后陛下が育てられた純国産種の蚕である小石丸から取った繊細な絹糸は、正倉院裂の再現や古美術品の修復にも役立てられています。
天皇皇后両陛下が日本の伝統文化の継承、振興と、海外との文化交流に努めてこられた足跡を、皆様に広く知っていただきたいと思います」
両陛下がお伝えになった日本文化を通して、海外の様々な人々が、わが国への親しみをと交流を深めてきたことが知られる展覧会です。ぜひ会場に足をお運びください。
【開催要項】
特別展 御即位30年記念「両陛下と文化交流―日本美を伝える―」
会期:2019年3月5日(火)~4月29日(月・祝)
※会期中展示替あり
会場:東京国立博物館 本館特別4・5室
住所:東京都台東区上野公園13-9
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
https://tsumugu-exhibition2019.jp/
開館時間:9時30分から17時まで、金・土曜日は21時まで(入館は閉館30分前まで)休館日:月曜日(ただし3月25日(月)、4月29日(月・祝)は開館)
取材・文/池田充枝