文・写真/宮本薫(海外書き人クラブ/ドイツ・ベルリン在住ライター)
完璧な音楽などというものはないはずだけれど、「今夜のこの演奏は、音楽史に残る演奏かも」という名演奏に立ち会えるかもしれない場所。それがベルリン・フィルハーモニーです。
彼らの演奏は、録音や映像配信サービス”デジタルコンサートホール”でも楽しむことができますが、ホールで生演奏を聴くことは、全く異なる経験です。クラシックが少しでも好きで、ベルリンに行く機会がある方は、生のベルリン・フィルハーモニーをぜひ経験してみてください。
世界一と言われるオーケストラ、集まる超一流のソリストや指揮者はもちろん、聴衆も本物の音楽ファンばかり。演奏家と聴衆の呼吸が素晴らしいのも、このホールの魅力の一つです。
2000人以上の人々が、最後の音が消えるその瞬間に完全に集中し、一瞬後に割れるような拍手が起こる。生の音楽は、音楽家による一方的なメッセージではなく、音楽家と聴衆との対話であることを感じる魔法のひと時です。
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と、そのホールは、世界中のクラシックファンの憧れの的。敷居が高いイメージがありますが、ベルリンはドイツの中でもカジュアルでリラックスしていることで知られている街。実は、“海外のホールは初めて”という人でも行きやすいホールです。
チケットってどうやって取るの?何を着ていけば良いの?ドイツ語はさっぱりわからないけれど……?という方に、具体的な楽しみ方をご紹介します。
チケットの取り方
まずは、公式サイトを開いてみましょう。
https://www.berliner-philharmoniker.de/en/
まず、上記のページを開き、左上の「CONCERT&TICKET」をクリック。さらに左の「CONCERT CALENDER & TICKET SALE」をクリックすると、本日以降のコンサート予定がずらりと出てきます。発売日以前のチケットは、「何月何日の何時からオンライン販売が始まります」と明記されています(大抵、ドイツ時間の午前8時に発売開始です)。行きたいコンサートが決まったら、右上端の「Log in」をクリック。顧客登録を済ませましょう。
ベルリン・フィルハーモニーには、大ホール、室内楽ホールがありますが、ここでは、大ホールの座席について解説します。
フロアプラン:
https://www.berliner-philharmoniker.de/en/concerts/floor-plan-price-list-20182019-philharmonie/
A席&B席:
ドイツでは、日本の1階を地上階、2階を1階と数えますが、A席は舞台の真正面、地上階の席です。とにかく近い方がいいという場合はこの席ですが、近すぎるので音のバランスは悪いです。特に一列目、二列目正面は、奏者の目の前という一体感が味わえる一方で、ソロ楽器とヴァイオリンの音ばかりが聞こえます。一番目立つ席なので、おしゃれをして、特別な夜の気分を味わうには良い席です。音と距離のバランスが良いのは、A席の真ん中あたりか、一階B席の一番前です。
G席:
いわゆる天井桟敷。大ホールの中で最も音響が良いと言われている席。ピアニッシモの音がフワーッと立ち上ってきて、音に包まれるという至福の経験ができます。正面から入場した後、ひたすら階段を登り、急勾配の本当に屋根の真下の席ですが、格安で素晴らしい音色を楽しめる席とあって、すぐに売り切れます。このカテゴリーは、若い音大生や音楽関係者が多い席で、カジュアルな普段着の人も多いです。
合唱団ベンチ:
上のリンク先の図に「Choir seating」と書かれているオーケストラ真裏の席です。合唱付の演目の場合は合唱団の人々が座るためのベンチですが、合唱無しの場合は売り出されることが多いです。
パーカッションのすぐ後ろということもあり、音のバランスは……なのですが、真ん中に座ると、指揮者の目の前。何度も目が合い、まるでオーケストラの一員になったかのような一体感を感じることができる席です。コンサートの前日に、会場のチケットオフィスで売り出されますが、たまにオンラインでも出ます。公演によっては当日券も手に入ります。
自由席で、価格は15~20ユーロ。タイミングが合えば是非。
さて、フロアプランを確認したら、実際にチケットを取得してみましょう。
人気公演のチケットを、発売日当日に取得する場合は、発売の少し前にログインし、クレジットカードなどを準備しておきます。時間になったら即購入ボタンを押し、システムに最適な席を自動で選ばせます。
最初の数分で売り切れることもあるので、どの席にしようか迷っている暇はありません。売り切れてしまっても、数時間後に放出されることがありますので、買えなかった場合は、もう一度確かめてみましょう。
すでに発売日を過ぎている公演の場合は、好きな席を指定しましょう。色がついている丸が購入可能席。クリックすると黒縁がつきますので、必要席数分を選び、「SHOPPING CART」をクリック。
カートに入れたチケットは、15分間保持されますのでその間に購入手続きを済ませます。このページで重要なのは、「Shipping options」(発送方法)。「Mobile Ticket 」を選びましょう。
次に出てくる画面でログインし、(顧客登録していない場合はここで登録)次の画面でクレジットカード情報を入力し、「Buy now」をクリックしたら購入完了。登録してあるメールアドレス宛にチケットPDFが送られてきますので、当日は印刷して持参しましょう。スマートフォンの画面で表示することももちろんできますが、突然の電池切れなどに注意を。
公演の選び方:
公式サイトでは、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団以外のオーケストラによる客演や、ホールを貸し切って行われる高校のオーケストラ・クラブの記念公演、また管弦楽団による海外引越し公演なども表示されますので、”ベルリン・フィルハーモニー大ホール”で、”ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団”の公演を聴きたい場合は、よく確認してください。
Watch onlineというボタンがあるものは、 “デジタルコンサートホール”でオンライン中継される予定の、一定レベル以上の演奏が期待できる人気公演です。
ドレスコード:
ベルリンのクラシックコンサートのドレスコードは、年末年始などの特別な公演を除き、ヨーロッパの他都市に比べ、かなり緩めです。50ユーロ以上の席であれば、男女ともに、きちんとしたレストランに行く程度の格好で十分。女性の場合は、シワにならない素材のワンピースにアクセサリーで大丈夫です。
安いカテゴリーの席では、カジュアルな人が多いので、おしゃれして行くと目立ちます。ジャケット、コートはクロークに預けるので気にしなくて大丈夫ですが、大きめのバッグも預けるので、女性の場合ハンドバッグがあったほうが便利です。終演後、公共の交通機関を使ってホテルに帰る場合は、目立たない方が良いので地味目に。ドレスアップしていく場合はタクシーかホテルに送迎を頼んでください。
サイン会
有名な奏者でも、ソロコンサートの場合、サイン会があることがあります。
事前告知は特にありませんが、ホールの外のCD売り場の横に簡易テーブルとペンが用意され、お客さんが並んでいたらサイン会です。希望する場合は、CDを買って並びましょう。
サイン以外、握手や一緒に写真を撮ってもらうことなどは出来ないこともあります。ドイツ語で説明がありますので、周りのドイツ人の行動に合わせてください。
【アクセス情報】
バス:
200番というバスが目の前の“Philharmonie”というバス停に停まります。
このバスはベルリンの主要駅であるZoologischer gartenやAlexanderplatzを通り、本数も多いので使いやすいです。
電車:
Potsdamer Platz 駅から約700m。
タクシー:
終演後は、タクシーも便利ですが、雨や雪の日などは、なかなか乗れないことがあります。早めに出て並びましょう。
ベルリンは、公共交通機関が乱れがちなことで有名です。何の予告も説明もなくバスが30分来ない、電車が止まるということはよくあることですし、説明がドイツ語のみのこともあります。また、タクシーで行く場合も、マラソン、自転車レース、デモなど様々な理由で通行止めになったり、タクシー自体が来なかったりすることがありますので、開演1時間前に到着する予定で動くことをお勧めします。遅刻した場合は、一曲終わるまでホール内には入れません。
[Berliner Philharmoniker ]
Herbert-von-Karajan-Straße 1, 10785 Berlin, Germany
電話番号(チケット販売): +49 30 2548 8999
月曜日から金曜日:9~16時
https://www.berliner-philharmoniker.de/
文・写真/宮本 薫(海外書き人クラブ/ベルリン在住ライター)
2001年から2016年までモロッコ、マラケシュ在住、2016年からドイツ・ベルリン在住。著書:「モロッコのバラ色の街 マラケシュへ」「彩りの街をめぐる旅 モロッコへ 」共にイカロス出版。海外書き人クラブ会員(http://www.kaigaikakibito.com/)。