文/中村康宏

健康オイルブーム! 摂り方を間違えるとシワやくすみの原因にも⁉

「油」と聞けばカラダに悪いというイメージをお持ちの方もいらっしゃると思います。一方で、オリーブオイルはたくさん摂った方がいいとか、健康食品としてフィッシュオイル(DHAなど)のサプリメントがあったりと、何をどう摂るのが正解かわからない方も多いのではないでしょうか。「脂肪は健康の敵ではない!研究に基づいた「体にいい脂肪」の摂り方【予防医療の最前線】」でカラダにいい脂質、悪い脂質をご紹介しましたが、今回はより具体的に、脂質とその摂り方について解説します。

■脂質摂取のカギは「55」の使い方!

脂質は体内で1gあたり9kcalとなります。一般的な成人の1日平均摂取カロリーが2000kcalと考えると、理想的な脂質摂取量は約55g(1日の摂取カロリーの25%程度)になります。例えば、カルビ丼(約840kcal)に含まれる脂質量が約35gであることを考えると、1食だけであまりにも多くの脂質を摂っていることに気づくはずです。しかし、脂質は少なすぎてもよくありません。脂質はカラダの中で、細胞やホルモンの材料になったり、ビタミンの吸収を良くする働きがあるためです。ですので、脂質は多くても少なくてもダメ。「55g」の制約の中で、上手な脂質を摂ることが健康に直結するのです。

■脂質は大きく3種類に分類される

脂肪は、不飽和脂肪酸と「飽和脂肪酸(S)」に分類され、不飽和脂肪酸はさらに「一価飽和脂肪酸(M)」と「多価不飽和脂肪酸(P)」に分類されます。これらは、S:M:P=3:4:3の割合で摂取することが望ましいとされています。これを上述の55gに当てはめると、飽和脂肪酸を16.5g、不飽和脂肪酸を22g、多価不飽和脂肪酸を16.5g摂るようにすることが理想です。(*1)

そのためには、具体的にどのように脂質を摂取すればいいでしょうか?

摂取すべき量の多い順に考えていきましょう。

■一価不飽和脂肪酸(M)

一価不飽和脂肪酸の代表的な脂質には「オレイン酸」や「パルミトレイン酸」があります。これらは、動脈硬化の原因となる悪玉(LDL)コレステロールを減らすため、血管を健康に保つ効果があります。(*2)これは、オリーブオイルやマカダミアナッツなどのナッツ類に多く含まれます。

■一価不飽和脂肪酸の落とし穴

残念ながら全ての一価不飽和脂肪酸に健康効果が期待できるわけではないのです。その典型が「トランス脂肪酸」。人工的に作られる「トランス型」の脂肪酸は、同じ一価不飽和脂肪酸であっても性質の全く異なる脂肪酸で、生活習慣病のリスク高めると言われています。(*3)マーガリンやショートニングなどに含まれていますので、トランス脂肪酸の摂りすぎには注意しましょう。

■飽和脂肪酸(S)

飽和脂肪酸は動物性脂肪に多く含まれます。現代社会において、食事内容を意識しないと、自ずと動物性脂質の取りすぎに陥ってしまい注意が必要です。なぜなら、動物性脂質の摂りすぎは、動脈硬化につながり、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを増やしてしまうからです。(*4)
そんな飽和脂肪酸の中には健康効果のあるものも存在します。例えば、一時ブームとなった“ココナッツオイル”や“パームオイル”など。これらの健康効果は、これらに含まれる「中鎖脂肪酸(MCT: Medium-chain Triglycerides)」によるものです。MCTは消化吸収が早いため、他の脂質のように消化管の動きを遅め消化吸収を遅くすることがありません。また、吸収が早いためエネルギー源として使われやすい性質があります。(*5)さらに、アルツハイマー型認知症の中でも一部(ApoE4陰性)の患者さんは、MCTによる認知機能改善効果があることがわかってきました。(*6)

■多価不飽和脂肪酸(P)

多価不飽和脂肪酸はヒトの体内で作ることのできないため、食品で摂取しなければなりません。多価不飽和脂肪酸は「ω-(オメガ)3」と「ω-6」に分類されます。体内では、細胞壁の構成成分となるほか、悪玉コレステロールを減らす、中性脂肪を減らす、血圧を下げるなどの効果があります。また、うつ病を減らす、脳神経の発達や認知機能の維持、アレルギー症状の緩和などの効果が報告されています。(*6、7)

そんないいことづくしの多価不飽和脂肪酸は以下の食材に多く含まれます。

n-3系脂肪酸(オメガ3)

DHA、EPA、エゴマ(α-リノレン酸)、ナタネ、魚の脂、くるみ

n-6系脂肪酸

大豆油、コーン油、マヨネーズ、ごま油

WHOなどのガイドラインでは、飽和脂肪酸の代わりに多価不飽和脂肪酸の割合を増やすことが推奨されています。摂取に際して注意が必要なのは、多価不飽和脂肪酸は「非常に酸化しやすい!」ということです。(*8)酸化して「過酸化脂質」となってしまうと、上述の効果とは逆に細胞を傷つける働きをしてしまいます。血管の細胞が傷つくと動脈硬化に、皮脂の酸化が起こると色素沈着やシワなど見た目の老化の原因になってしまいます。多価不飽和脂肪酸の酸化を防ぐには、ビタミンCやビタミンEなどの抗酸化物質を一緒に摂取することがオススメです。

以上、具体的な脂質の摂り方について解説しました。
この記事のおさらいになりますが、摂取すべき脂質を考える際に重要なポイントは3つ

一日摂取脂質の総量
飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸の比率
脂質の酸化を抑えるために抗酸化物質と摂ること

脂の乗った“マグロのトロ”や“霜降りの牛肉”など、美味しいものには必ず脂質が含まれます。この3点をおさえながら、美味しいものを健康的に召し上がってください。

【参考文献】
1.日本人の栄養所要量―食事摂取策定基準―
2.Lancet 1994: 343; 1454-9
3.農林水産省
4.Cochrane Database Syst Review 2015: CD011737
5.PLoS One 2018; 13: e0191182
6.Front Aging Neurosci 2014: 6; 282
7.Am J Psychiatry 2001: 158; 328
8.WHO


文/中村康宏
医師。虎の門中村康宏クリニック院長。アメリカ公衆衛生学修士。関西医科大学卒業後、虎の門病院で勤務。予防の必要性を痛感し、アメリカ・ニューヨークへ留学。予防サービスが充実したクリニック等での研修を通して予防医療の最前線を学ぶ。また、米大学院で予防医療の研究に従事。同公衆衛生修士課程修了。帰国後、日本初のアメリカ抗加齢学会施設認定を受けた「虎の門中村康宏クリニック」にて院長。一般内科診療から健康増進・アンチエイジング医療までの幅広い医療を、予防的観点から提供している。

【クリニック情報】
虎の門中村康宏クリニック
ホームページ:http://tnyc.tokyo
住所:東京都港区虎ノ門3-22-14日本FLP虎ノ門ビル12階
Twitterで有益な最新健康情報をお届け:@ToranomonNYC

【お問い合わせ・ご予約】
電話:03-6823-1409
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