文/晏生莉衣
グローバル化時代、日本人が外国人と交流する機会は増えています。この教養シリーズでは、異文化理解について楽しみながら学ぶためのトピックスを紹介していきます。国際人としての常識を身につけて、あなたの世界を広げましょう。
* * *
同じ英語圏でもアメリカとイギリスでは、日付の書き方が違います。たとえば20XX年8月1日なら、アメリカでは、
August 1,20XX または 8/1/20XX
と書きます。日本では年が一番先、アメリカでは一番最後と逆転しますが、月(month)のあとに日(day)が来るのは同じです。
しかし、イギリスの場合は、
1 August,20XX または 1/8/20XX
と、月と日の順序がアメリカ式とは逆になります。まず何日と書いて、その後に何月かを書きます。
日にちのあとに1st、10thのように、接尾辞というものをつける丁寧な書き方もありますが、ここでは順番に注目していますので省略。接尾辞をつけても順番は変わりません。
さて、ここで問題となるのは――、アメリカ式かイギリス式かで日付を混同してしまう場合があることです。
8/1/20XX は8月1日なのか、1月8日なのか?
1/8/20XX は1月8日なのか、8月1日なのか?
とりあえず、アメリカ式とイギリス式では順番が逆になる、そのことを知っていれば「8/1=8月1日」とだけ思い込んでしまう危険性は避けられますね。違いがあることを知っていれば、いったいどちらなのかと確認する意識がまず出てきますし、たいていの場合は状況で判断できます。また、アメリカ人のビジネスパートナーが8/1/20XXと書いてきたなら8月1日でしょうし、イギリス人のビジネスパートナーなら1月8日と思ってよいでしょう。
月は12月までしかありませんので、13日以降の日付であれば、混同する危険はありません。 “20/12”と書かれていたら、20月12日ということはありませんから、「これはイギリス式に書かれていて、12月20日のことだな」と、理解できるわけです。
このような混乱を避けるためには、レターの日付なら、書く際に月を数字ではなく単語で書くようにする方法があります。8月1日なら “August 1(st)”、あるいは “1(st) August”、のようにです。カッコ内の(st)はつけてもつけなくてもかまいません。
日本人は日本語の順序と同じ、月、日で表すアメリカ式のほうが使いやすいでしょう。なにしろ、今日は何日と聞かれて「1日8月」とは言わないし、誕生日を聞かれて、「1日8月生まれです」とはいわないですから。イギリスではこのように言っていると想像すると面白いですね。
実は、世界規模でいえば、日本人にとってはさかさまとなるイギリス式が主流ともいえます。イギリスはかつて世界の多くに植民地を持っていましたから、イギリス式の英語はそうした旧植民地が国として独立したあとも使われているからです。そして、イギリス連邦(Commonwealth of Nations)は現在53カ国もあります。イギリス連邦以外に、ヨーロッパでも英語を使う場合は一般的にイギリス式が使われています。しかし、これはあくまで使われている国の分布のことで、英語圏にしめるアメリカの人口の多さと、世界一の経済大国としての影響力から、特にビジネスの世界ではアメリカ式のほうが多く使われていると考えられます。それにしても、アメリカ式とイギリス式でどうして順番が逆転するのかというと、諸説はあっても絶対的に明確な理由やいきさつはわかっていないようです。
文・晏生莉衣(あんじょうまりい)
東京生まれ。コロンビア大学博士課程修了。教育学博士。二十年以上にわたり、海外で研究調査や国際協力活動に従事後、現在は日本人の国際コンピテンシー向上に関するアドバイザリーや平和構築・紛争解決の研究を行っている。