取材・文/池田充枝
食いしん坊でおっちょこちょい、今では誰もが知る世界で一番有名なクマである「プーさん」。イギリスのアラン・アレクサンダー・ミルン(1882-1956)の物語にアーネスト・ハワード・シェパードが挿絵を描いた『クマのプーさん』が出版されたのは1926年。
A.A.ミルンの息子、クリストファー・ロビンとぬいぐるみのクマがモデルのお話は、E.H.シェパードの挿絵によって機知とユーモアあふれる世界を生み出しました。
二人の共作によって生まれた『クマのプーさん』(1926)、『クマのプーさんとぼく』(1928)、『プー横町にたった家』(1929)は、世界中の人々を魅了し、50以上の言語に翻訳され、全世界で5000万部以上のシリーズ本が出版されています。
クマのプーさんのふるさと、英国ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)からプーさんの原画コレクションがやって来ます。(4月14日まで)
本展は、シェパードが描いたプーさんの原画を世界最大規模で所蔵するV&Aが、鉛筆素描画をはじめとする原画など200点以上で構成する展覧会で、母国イギリス(ロンドン)とアメリカ(アトランタ、ボストン)を巡回し、日本にやってきます。
本展の見どころを、主催であるフジテレビのプロデューサー、中里弘毅さんにうかがいました。
「見どころは何といっても、シェパードの原画が数多く集まっているところです。昨年、シェパードの原画の1つが、オークションで、6300万円で落札されてニュースになりましたが、そうした価値のあるシェパードの原画約90点が集められています。
またその1点1点を見ると、シェパードの手法や、潜ませた仕掛けなどが見えてきます。
例えば、ご飯が食べられなくて元気がないプーが、少年クリストファー・ロビンに、「力が出る本を読んでくれ」と頼むシーンの挿絵があるのですが、クリストファー・ロビンが読んであげた本の表紙に「JAM」と書かれています。甘くておいしい「ジャム」と書かれた本なら、きっと力がでるだろう、というユーモアなのですが、このことは文章では触れられておらず、シェパードが挿絵だけで遊んだユーモアです。このように、シェパードはミルンの物語をただ描くのではなく、ミルンの遊び心を挿絵でも表現しましたが、そうしたシェパードのセンスが原画には表れています。
また展示だけでなく、プーさんの世界観をイメージした装飾などを施し、会場にいるだけでウキウキする可愛らしい雰囲気となっています。グッズも展覧会限定のものだけで、200点以上ご用意しました。特に、今回シェパードの鉛筆画を元にしたグッズをV&Aが作りましたが、鉛筆画がグッズになったのは初めてのことだそうです。
原画は今年の公開が終わると、作品保護のため最低10年は非公開となりますので、次に見られるのは、かなり先になってしまいます。その点でも見逃せない展覧会になっています」
年齢を問わず愛されるプーさん!その誕生の物語を貴重な資料で辿る展覧会です。ぜひ会場足をお運びください。
【開催要項】
クマのプーさん展
会期:2019年2月9日(土)~4月14日(日)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
住所:東京都渋谷区道玄坂2-24-1
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
https://wp2019.jp
開館時間:10時から18時まで、金・土曜日は21時まで(入館は各閉館時間の30分前まで)
休館日:2月19日(火)、3月12日(火)
巡回:2019年4月27日~6月30日 大阪・あべのハルカス美術館
取材・文/池田充枝