取材・文/ふじのあやこ
家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。~その1~はコチラ
今回お話を伺ったのは、都内の結婚相談所のスタッフとして働いている加奈子さん(仮名・38歳)。島根県出身で、両親と1歳上に兄、5歳下に妹のいる5人家族。家族仲は良かったものの、中学でいじめに遭い、高校では人の顔色を伺うようになってしまったことで心を許せる友達は一人もできず。高校卒業後は心機一転、地元を離れ京都のデザイン事務所で働き始めますが、慣れない環境から働き出して2か月目には欠勤続きになり、約3か月で退職してしまったそう。
「織物のデザインをメインにやっている職場でしたが、私の仕事は雑用ばかり。経理の仕事の手伝いで一日中エクセルに数字をずっと入力していたり、取引先に納品するものの伝票を書き続ける日もありました。それだけならまだ良かったんですが、職場は学校のような女性の仲良しグループがあって、彼女たちはいつも誰かの文句を言っていました。その都度ターゲットが変わったみたいで。いつも誰かの悪口が聞こえてくる環境で、ちっとも仕事は楽しくない。そんな憂鬱な気持ちから、朝起きて少しでもしんどいと思ったら会社を休むようになってしまって。欠勤を何度が繰り返すと、ターゲットが私になったんです。もう無理だと思いました。最後は体調を崩して実家に帰ると嘘をついて辞めました」
仕事を辞めて夜の世界へ。最初は京都で頑張っていると、安心させるためについた嘘だった
仕事を辞めたことを両親には言えなかった加奈子さん。生活のために夜の仕事を始めたと言います。
「生活していくために、最初は仕方なく始めました。勤めたのはカウンターが数席、4名テーブルが2つあるような小さいお店で、隣に座ることもあるけど、ほとんどがカウンター越しの接客でした。小さいお店だからなのか、みんな他に懸念があるからなのか、誰も他人のことなんか気にしていなくて。グループというより個々なんです。その感じも居心地が良くて。最初はつなぎとして始めたのに、次第に就職活動をしなくなり、夜中心の生活になっていきました」
夜中心の生活が2年ほど続いた間も正月やお盆などは実家に帰省していたそう。その時には前職を続けていると嘘をついていたと言います。しかしあることがきっかけで両親にバレてしまい……。
「妹が大阪に遊びに来ていて、友人たちと大阪のホテルで1泊だけして帰ると聞いていたんです。妹が突然京都へ来た時には、私は仕事中だったので、すぐに妹に問い詰められてバレてしまいました。妹には両親への口止めをお願いしたのに、あの子はすぐに言いましたね。妹が実家に帰ったぐらいのタイミングで母親から電話がかかってきましたから」
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