取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「普通じゃないって自分で決めつけていたんだと母親が教えてくれました」と語るのは、彩香さん(仮名・28歳)。彼女は現在、都内で派遣スタッフとして働いています。ボブの黒髪にきめ細かい白い肌、姿勢や所作などから清楚な雰囲気を感じさせる女性です。
幼少期に一番覚えていることは姉とのケンカ。おさがりが嫌で仕方なかった
彩香さんは埼玉県出身で、両親と3歳上に姉のいる4人家族。父は都内の企業に勤めるサラリーマン、母親は近所のスーパーでパート勤務をする兼業主婦です。悪いことをすると怒るのはいつも母親だったそうで、よく叩かれていたと言います。
「小さい頃に怒られた記憶で残っているのは母親だけです。父親からはまったくと言っていいほど何も覚えていませんね。きっと怒られてはいたと思うんですが(苦笑)。母親は私が言うことを聞かないと手を出すタイプの人だったので、痛みで覚えているのかも。でも、虐待とかじゃないですよ!いっぱい叩かれましたけど、辛い記憶では残っていないので。それだけ悪いことをしていたんだと思います」
母親からの躾よりも鮮明に覚えているのは姉との不仲だと彩香さんは語ります。
「姉妹の仲は本当に悪かったです。3個上って、丁度中学や高校が被らないんです。だから中学なんてジャージや通学カバンまで姉のお古でした。私はそれが嫌で嫌で仕方なくて……。
高校は同じような成績だったんですが、勉強を頑張って姉より上の学校に進学しました。高校までお古なんてまっぴらだったから。友人はお姉ちゃんと私服を共有したりしていたけど、私たち姉妹はまったく。中学までは叩き合うようなケンカをしていたんですが、私が高校に進学した時には会話さえなくなっていました」
高校時代には反抗期に入り、母親との会話もなくなったそう。しかし高校では部活動など、家よりも楽しいことが増えて充実していたと言います。
「バスケ部に入って、ずっと部活のメンバーと行動していました。強豪校でもないし、大きな目標があったわけでもないけど、みんなと一緒にいることがただ楽しくて。それに同じ部活で彼氏もできたんです。部活以外でも私たちカップルと数人の男女グループでよく遊んでいました。当時家族で過ごした記憶はないけど、友達と海に行ったり、花火大会に行ったり、卒業旅行に行ったり、いろんな思い出が残っていますね」
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