取材・文/ふじのあやこ
家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。~その1~はコチラ
今回お話を伺ったのは、都内の美容院で美容師として働いている瑞穂さん(仮名・28歳)。千葉県出身で、両親と1歳下に妹のいる4人家族。小さい頃から家族仲は良好なものの、姉妹仲は悪く、別々の高校に進学した以降はあまり口をきかなかったそう。しかし専門学校でできた彼氏が間に入ってくれ、姉妹の仲が修復されます。そして、瑞穂さんは2年間、妹は1年間の専門学校を経て、同時期に就職することになります。
「私は県内の美容院で美容師に、妹は市役所の公務員になりました。うちの親戚には公務員が多くて、妹は小さい頃から公務員を目指していたのでさすがだなって思いましたね。妹は実家から通ったんですが、私は就職を機に彼と同棲したいと両親に伝え、彼のことを気に入っている両親はすんなり快諾でした。学生時代は私がいなくても両親と3人でご飯を食べたりするなど、彼は私の家族のお気に入りでしたから」
「店の近くに住まないやつはやる気が足りない」。初めて働いたお店でさまざまなことを強要され続け……
最初に働いた美容院では上下関係が厳しく、部活のような雰囲気だったとか。毎日始発から終電まで働く毎日の中、睡眠が足りないことでどんどん思考が偏ってきたと言います。
「スポ根って言うんですかね。とにかく朝から大きな声で挨拶を強要されたり、何をするにも一度先輩の確認が必要でしたね。それに、私は家が少し遠かったので他の子より少しだけ終電が早かったんです。それについて逐一注意を受けていました。『店の近くに住んでないやつはやる気が足りない』と。
毎日文句を言われて、週に1~2度は休みがあったんですが、レッスンで呼び出されることが当たり前。もちろん休みの日で勉強会だから給料は出ません。そんな中で思考回路が単純化してくるんですよ。常時寝不足で深いところまで考えられないというか。いつからかずっと『辞めたい、辞めたい』って心の中でつぶやくようになっていました」
あまりにも辛かった思いから半年も経たずにお店を辞めてしまったそう。そんな中、同じ美容師だった同棲中の彼がマルチ商法にハマり、瑞穂さんにも同じ仕事を進めてきたことで別れを選択します。
「あの時期は本当にボロボロでした。すごく痩せていましたし。毎日仕事だけの往復で同棲中だったのに彼とあまり会話もしていなくて、彼が私よりも先に美容師を辞めていたことにも気づきませんでした。
そして仕事を誘われ出した時に、もう無理だなって思ったんです。母親には仕事を辞める時に一度電話で相談していたので、彼と別れることも伝えました。そしたら『家に帰ってきなさい』って言ってくれて」
次ページに続きます。