高齢者のお金や健康、孤独に対する不安に付け込んだ悪質商法が後を絶ちません。被害にあわないためには、どんな手口やトラブルが多いのかを情報収集するとともに、強引な勧誘を受けることがあれば、その場で決めずに、家族や消費生活センターに相談しましよう。
巧妙化する手口の実態
高齢者を狙った悪質商法が後を絶ちません。2015年度に全国の消費生活センターに寄せられた相談のうち、契約当事者が60歳以上のものは全体の3割を超え、5年前の2010年度の約1.2倍になっています。
相談内容を販売手法、手口別に見てみると、販売業者が自宅や職場に電話をかけてきて、虚偽の説明をしたり、強引に商品を案内したりする「電話勧誘販売」、販売業者が自宅を訪問し、長時間にわたり強引な勧誘をする「家庭訪問販売」などがあります。近年では、自発的に取引を行う「通信販売」に関する相談が増えているようです。
お金や健康、孤独に不安を抱えがちな高齢者は、こうした犯罪のターゲットになりやすいですし、自宅にいることが多いので、訪問販売や電話販売を受ける機会が多いのです。高齢者の日常生活に関する意識調査でも、詐欺や犯罪による財産の消失を心配する声が聞かれています。
リタイア後の生活に対する不安をーつでもなくし、心豊かに過ごすためには、トラブルを避けるための備えについて、知っておくことも大切です。
トラブルにあわないためには、商品の購入や、契約の前には、配偶者や子どもたちに相談するなど、一人で判断しないように心掛けましょう。また、同世代の人がどんな手口で被害にあっているかを知っておくことが有効です。
もしも被害にあってしまったり、何かおかしいと感じたら、すぐに自治体の消費生活センターの窓口に相談しましょう。全国からの電話相談を受け付ける、消費者ホットライン(局番なし・188:いやや)では、最寄りの消費生活相談窓口を案内してもらえます。
【事例1:リフォーム詐欺】地震の後、突然来訪した業者に屋根のシート掛けの補修を勧められた。工事代金の約30万円を全額前払いで支払って、工事が終わった後に確認したところ、薄いビニールをテープで貼り付けただけの手抜き工事だった。
「早く工事しないと大変なことになる」などと不安をあおって契約を急がせたり、工事内容についてあまり説明せずに工事をして高額な請求をしたりするケースが見られます。勧誘されてもその場ですぐに頼まず、工事の内容や費用についてよく確認したうえで、家族などに相談しましょう。複数の業者から見積りを取ったりして、十分に検討することも必要です。
なお、訪問販売で契約した場合も、法律で定められた契約書面を受け取ってから8日以内であれば、クーリング・オフで契約を解除することができます。クーリング・オフは、たとえ工事が終わっていても可能です。
【事例2:送りつけ商法】「注文のあった健康食品を代金引換で送る」と電話があった。「注文した覚えはない」と伝えると「確かに注文している。代金は2万円。支払わないと訴える」と脅された。経済的にゆとりがないので、そんなに高い健康食品を注文するはずがないのに、翌日業者が言ったとおり商品が届いてしまった。
このケースのように、承諾していないのに一方的に商品が送られてきた場合、代金の支払い義務はありません。また、商品の受取義務もないので、安易に受け取らないようにしましょう。勧誘の電話がかかってきたら、きっぱり断るとともに、業者の名前や連絡先を確認するようにします。
【事例3:次々販売】ある日、突然、消火器の交換に来たという男性の訪問を受けた。亡くなった夫が以前買った消火器の交換なのだろうと思い、2万円ほど支払って交換してもらった。すると2カ月後にまた同じ男性が「消火器の取り換え時期だ」と訪ねてきたので、2万円支払って取り換えた。その後も2カ月おきに計4回訪問を受けて消火器を交換し、8万円以上支払ってしまった。こんなに頻繁に消火器を取り換えるのはおかしいのではないか。
「この消火器は耐用年数を過ぎている」「消火器は定期的に交換する義務がある」などと言って、購入を迫られるケースがありますが、一般の住宅に消火器の設置義務や交換頻度などに関する決まりはありません。消火器には使用期限が表示されています。「交換」などと言われた場合は、まず表示を確認するようにしてください。
【事例4:不当請求】スマートフォンからアダルトサイトにアクセスし「18歳以上」をタップしたところ、突然登録になってしまった。退会のためにメールを送信したら「自動退会できません。サイトに電話をかけるように」という返信メールが届き、15万円を請求された。サイトに電話をかけたが出なかったので、インターネットで検索した「消費者相談センター」に相談したところ、「当社に約10万円を支払ってもらえれば解決する」と言われた。依頼したところ、コンビ二で契約書面を受け取るように指示され、名前、住所、携帯電話番号などを書きFAXで送り返した。後になって警察に相談したら無視をすればよかったと言われた。
無料だと思っていても、アダルトサイト等は突然料金を請求されることがあるので、不用意にアクセスしないようにしてください。身に覚えのない請求をされた場合には、あわてて支払わないようにしましょう。また、消費者トラブルの解決をうたう事業者による二次被害や、国民生活センターや公的機関をかたる詐欺的な手口に気を付け、困った時には自治体や警察に相談して下さい。
※事例は独立行政法人国民生活センターホームページ「高齢者の消費者被害」よリ再構成
※本記事はNPO法人 日本FP協会発行のハンドブック「自分らしく暮らすために 60代から始めるマネー&ライフプラン」から転載したものです。
協力:NPO法人 日本FP協会 https://www.jafp.or.jp/