知っておきたいイベントとお金
理想の暮らし方ややりたいことを実現するために、費用がどのくらいかかるのかを調べ、何歳で実行に移したいかを表にまとめてみましょう。こうして完成したライフイベント表は、これからの人生の設計図になります。
どこまでお金をかけますか
現状の把握ができたら、次はいよいよ、理想とする暮らし方や、やりたいことのリストアップです。自宅の買い替えや海外長期滞在といった大きなイベントから、家庭菜園、市民マラソンへの参加といった趣味に関することまで、これからやってみたいことを思いつくまま書き出してください。最初から予算的に難しいと控えめに考えず、この段階では自分の気持ちに素直にやりたいことを挙げてください。
次に、インターネットや書籍、各種ガイドブックで情報収集し、一つひとつのイベントについて予算を見積もりましょう。後述の「イベントにかかるお金の目安」にも、代表的なイベントにかかるお金をまとめてあります。リフォームや住み替えにかかるお金は別項目で取り上げます。
同時に、リストに挙げたイベントをいつ頃実行したいかを考え、下のライフイベント表に書き込んでいきましょう。子どもの結婚や、孫の誕生など、自分では時期を決められないことも多いのですが、あまり厳密に考えず、予定として記入していきましよう。
計画の修正も大切なポイント
これからは、歳とともに体力の衰えは避けられません。それを考えると、時間があるように思えたリタイア生活も、やりたいことができる期間は意外と短いと感じるかもしれません。予算と合わせて、実行に移す時期を考えることで、イベントがより現実的なものとなるでしょう。
やりたいことがたくさんあって、手持ちのお金ではすべて実現できそうにない場合、優先順位を付けてください。どこが譲れなくて、どこなら削れるかを考えていくと、自分にとって本当に大事なことも見えてくるはずです。
ひととおり書き込みができたら、ほかのイベントにかかる費用とのバランスを考え、やりたいことや計画を修正するのも大切なことです。
イベントにかかるお金の目安
■子どもや孫への援助
子どもたちも独立し、親としての肩の荷が下りた家庭でも、結婚や住宅購入の際は、少し援助したいと考えている人は多いのではないでしょうか。
「ゼクシィ結婚トレンド調査2017」によると、結婚の際に親から援助をもらった人の割合は76.1%、平均額は約182万円(結納、挙式、披露宴・披露パーティ、二次会、新婚旅行に対する援助総額)。また、全国で注文住宅を建築した人への調査では、親からの贈与額は平均766万円です(出典:リクルート住まいカンパニー2016年注文住宅動向・トレンド調査※0円除く)。
特にここ数年は、住宅購入時の親や祖父母からの援助に、大型の非課税枠が設けられた影響もあり、住宅購入時の贈与がしやすい環境にあります。
結婚や住宅購入の時期は子どもによって違います。きょうだい平等に、と考えるなら、下の子には余裕がなくなり援助できないということにならないよう計画的に準備しておきましょう。
■夫婦の旅行
退職して時間ができたらやってみたいことの定番といえば旅行です。総務省統計局家計調査年報(家計収支編)によると、2人以上世帯で世帯主が60歳代の家庭の1世帯当たりのパック旅行費の年間支出金額(2017年)は、約6万5000円となっています。
ひとくちに旅行といっても、行き先や滞在日数、宿泊先や行く時期によって、額は大きく変わります。海外に足を延ばすなら、なおさら費用は変わるでしょう。
そこで、行き先の候補をいくつか挙げて、パックツアーなのか個人旅行なのかなど、希望に合わせてパンフレットやインターネットで調べて相場をつかみ、少し多めに考えておくとよいでしょう。先に大まかな予算を立て、それに合うように旅の内容を考えるのもよい方法です。
■海外で暮らす
リタイア後の暮らし方として、海外への移住や長期滞在に興味を持つ人が多いようです。
風土や気候、文化が気に入った国でのんびり過ごす楽しみもありますし、タイやフィリピンなど、日本より物価の安い国ならば、同じ年金額で日本より余裕のある暮らしが期待できます。
移住するためには、その国のリタイアメントビザなどを取る必要があります。ビザ取得の条件は滞在する国によって異なりますが、毎月の年金額を一定額以上受け取っていることや、現地の銀行に指定された金額以上の預金があることなどの規定がある場合もあります。滞在にかかる費用以外にも、こうしたお金の段取りが必要です。
■車の買い替え
60歳を過ぎてからの車の買い替えは、運転しやすい軽自動車に買い替える人もいれば、昔から乗りたかった憧れの車種を購入する人もいるでしよう。車は購入時だけでなく維持費がかかります。税金や保険料が安く抑えられる軽自動車に対し、外車はメンテナンス費用もかさむかもしれません。どんな車を買うかは購入後の費用も考えて検討することをおすすめします。
■独立開業・資格取得
開業資金の見積りは、場所を借りるのか、人を雇うのか、仕入れはどのくらい必要かなど、開業後の事業をできる限り具体的にイメージして、どんな費用がかかるのかをリストアップすることから始めます。なかでも負担が大きいのが家賃です。カフェなどの場合は、内装にもお金がかかりますし、場所を借りるなら、一般的には、家賃の半年から1年分の保証金の準備も必要です。リタイア後の開業には、国や地方自治体から融資や助成金が受けられる場合があります。制度内容の変更や、申請期間限定のものもあるので、興味のある人は厚生労働省や経済産業省のホームページをこまめにチェックしてみましょう。
また、リタイア後の生活をより充実させるため、資格の取得を考える人も多いようです。資格取得講座に通うなら、ぜひ活用したいのが、教育訓練給付制度です。一般教育訓練給付金の場合、厚生労働大臣が指定した教育訓練を受講し、無事に修了すると、支払った費用の20%が10万円を限度として雇用保険から受けられるものです。会社を辞めてしまった人でも、退職後1年以内なら申請できます。
資格で収入アップを狙うなら、必ず、その資格でどのくらいの仕事があるのかリサーチしてください。資格だけで仕事につなげることは難しいため、人脈づくりなども心掛けましよう。
■その他
人生最後のイベントともいえるのがお葬式です。2016年に行われた日本消費者協会のアンケート調査によると、葬儀費用の全国平均は約200万円。葬儀の費用を生命保険で準備する人も多いようです。
先祖代々のお墓に入らないなら、用意が必要です。お墓の費用は、公営の霊園なら永代使用料が20万円程度、墓石建立は60万円程度から可能ですが、民営ならば100万円超えを覚悟しましょう。
ただ、葬儀やお墓については住まいのある地域の習慣や家庭の考え方による影響が大きいので、一概に平均値が参考にならない場合もあります。人生の幕引きも自分らしく形式にこだわらないスタイルにしたいなら、エンディングノートを使うなどして家族に意思を伝えるとともに、お金の手当も考えておきたいものです。
なお、主なイベント費用を下にまとめました。家庭により幅のあるものなので目安として参考にしてください。
※本記事はNPO法人 日本FP協会発行のハンドブック「自分らしく暮らすために 60代から始めるマネー&ライフプラン」から転載したものです。
協力:NPO法人 日本FP協会 https://www.jafp.or.jp/