相続税を払う、払わないにかかわらず、すべての人に起こりうるのが相続です。60代の人なら、財産を親からどう引き継ぐかと同時に、子世代にどう遺すかも気になるでしょう。相続の基本的なルールや、相続税の計算方法がわかれば、やるべきことも見えてきます。
財産のスムーズな引き継ぎのために
「うちは、親きょうだいも親戚も仲がよいので、相続にまつわるもめごととは無縁なはず。第一、もめるほどの財産もないし…」と思っている人は、少なくないでしょう。しかし実際には、それまで仲のよかったきょうだいが、親の相続をめぐるトラブルで絶縁状態になってしまうのはよくある話です。
もめごとにまで至らなくても、親が亡くなって、預貯金500万円と住む人がいなくなった家が遺った場合、これをきょうだい2人で分けようにも、簡単には結論が出ないこともあります。
また、故人にローンの残債などの負債があった場合、相続でもらった財産の範囲で負債も相続する「限定承認」や、そもそも相続の権利を放棄する「相続放棄」などは、相続が起きてから3カ月以内に届け出なければなりません。
相続は突然起きることが多いにもかかわらず、期限内に財産の全容を把握して適切に判断し、なおかつ原則それを相続する人全員が納得できるよう分割しなければならないのです。そう考えると、遺された家族にとって、それなりに負荷が大きいのが相続の手続きだといえるでしょう。
だからこそ遺す側は、少しでもスムーズに引き継げるよう、日頃から財産を把握、整理しておくことが大切です。また、相続の基本的なルールを知っておくと、あらかじめ起きそうなトラブルを回避しやすいのではないでしょうか。
基本のルールとして押さえておきたいのが、法定相続人と法定相続割合です。法定相続人とは、相続が起きたときに、法律上財産を引き継ぐ権利のある人です。夫または妻は、常に法定相続人になりますが、併せて第1順位の子どもが相続人になります。もし、子どもがいなければ第2順位の父母など、父母もいなければ第3順位のきょうだいが、配偶者とともに相続人になります。
遺言がない場合、法律にのっとって、財産を分けることになります。これが、法定相続割合です。誰が相続人になるかで、財産の配分も決まっています。
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気をつけたいのが、子どものいない夫婦の場合です。仮に両親がすでに他界している場合、法定相続割合どおり財産を分けるとすると、きょうだいに4分の1の権利が発生します。自分にもしものことがあったら当然、財産は妻が引き継ぐものと思っていても、きょうだいが権利を主張したら、4分の1は渡さなければなりません。そういう場合は、遺言を遺すことで、妻がほぼ全額相続することができるのです。
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