取材・文/渡辺陽

腰痛トレーニング研究所の川口陽海(かわぐち・はるみ)さんは、自身も長年腰痛に悩んだ末に、独自の腰痛緩和メソッドを編み出し、これまで1万人もの腰痛に悩む人を治療してきました。本連載では、そんな川口さんの過去の治療事例を元に、腰や脚の痛みやしびれの解決法を実例と共にご紹介します。

今回の相談者は、今田和昭さん(仮名)、不動産会社のオーナーです。身長167cm、体重75kgで恰幅が良く、趣味のゴルフで日に焼けた肌が健康そうなイメージの方でした。

ところが、以前から抱えていたという腰の痛みが、だんだんひどくなり、犬の散歩で10分歩いただけで足がしびれるようになったのです。腰から足にかけてしびれを感じると歩けなくなり、少し休むとまた歩けるようになるのですが、また痛みやしびれがぶり返す。こうした症状を「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」と言います。

「さすがにこれはまずい」、と思った今田さんは、病院で診察してもらい、レントゲンやMRIの検査を受けました。椎間板は潰れ、脊柱管も狭くなっていて、そのため坐骨神経を圧迫しているという診断結果。医者には、「手術をしたほうがいいですね。ゴルフはやめなさい」と言われました。

今田さんは、すぐに手術をする気にはなれず、しばらく病院や接骨院で治療をしてみましたが、一向に良くなる兆しがありません。

「何かいい治療法はないかと探していたところ、ゴルフのコーチに腰痛トレーニング研究所を紹介されたのです。ダメでもともとと思い、訪ねてみることにしました」

今田さんの話を聞いた川口さんは、

「手術をしなくても大丈夫。ただし、マッサージなどを受けるだけでは決して良くならないので、ストレッチやトレーニングを積極的にしてください」と、伝えたのです。

今田さんは、もっと何か治療らしきものをしてもらえると思っていたのですが、思いがけない川口さんの言葉に、少々面食らいました。

「病院や接骨院では、電気治療やマッサージを受けるだけだったのですが、腰痛トレーニング研究所では、施術に加え、ストレッチやインナーマッスルのトレーニング法を指導され、それを自宅でも繰り返しやらなければなりませんでした。正直、最初は、こんなことで良くなるのか不安でしたが、続けていると、次第に痛みやしびれが和らいでいきました」

今田さんのような、足の痛みやしびれを感じるものの、少し休むと治り、そしてまた症状がぶり返す「間欠性跛行」の場合、「小殿筋(しょうでんきん)」のトリガーポイントが原因のことが多いのです。

では、実際の施術法を見てみましょう。

今田さんの場合、典型的な小殿筋のトリガーポイントによる症状でした。小殿筋を押さえると、「そこを押さえられると、強烈な痛みとしびれが足全体に出てきます」と言うのです。

小殿筋のトリガーポイント

小殿筋は、股関節の一番奥にある筋肉で、ここが何らかの原因でトリガーポイントになってしまうと、臀部から足の後ろや外側(図の赤い部分)に痛みやしびれを感じます。ひどい場合は、足の裏や指先にまで症状が出るのです。

「間欠性跛行は、一般的に神経の症状と考えられていますが、神経ではなく、小殿筋、つまり筋肉から生じている場合があります。この場合神経痛に対する薬やブロック注射などは、あまり意味がありません。病院でこうした治療を受けても、あまり効果が感じられない場合、筋肉が原因になっている可能性があります」

小殿筋を中心に、10分ほど、脚全体をマッサージして緩めると、初回であるにもかかわらず、

「すごく脚が軽い!痛みやしびれはまだあるけれど、半分以下になっています」と、今田さんは言いました。

今田さんには、小殿筋を緩める施術に加え、小殿筋のストレッチを指導しました。

また、体幹インナーマッスルのトレーニングなどもあわせて行なってもらいました。

このようなストレッチやトレーニングで、一か月後には、ゴルフを再開できるまでになったのです。

以上、今回のポイントをまとめておきましょう。

【今回のポイントまとめ】
(1)足の痛みやしびれ(坐骨神経痛)、間欠性跛行の症状は、小殿筋のトリガーポイントが原因のことがある。
(2)筋肉(トリガーポイント)が原因の腰痛を和らげるには、ストレッチやトレーニングが有効
(3)手術が必要と言われるくらいの症状でも、ストレッチやトレーニングを行うことで、症状を緩和できる


指導/川口陽海
厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。

【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616
http://www.re-studio.jp/index.html

取材・文/渡辺陽(わたなべ・あきら)
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。小学館「サライ.jp」、文藝春秋「文春オンライン」、朝日新聞社「telling」、「Sippo」で執筆。自身は、健康のために鍼灸とマッサージに通う。

 

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