夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。火曜日は「暮らし・家計」をテーマに、進藤晶子さんが執筆します。
文/進藤晶子
独身時代、友人のスタイリストさんたちとよくフリーマーケットに参加していました。代々木公園で日曜日の朝、洋服や小物、雑貨、引き出物でいただいたマグカップなどの食器を並べていました。
100円と値段をつけているところに、「50円でいい?」とお客さんに聞かれ、値引きしたりしなかったり。積もり積もって、けっこう豪華なランチ代になるぐらいの売り上げになりました。お客さんとの会話も含めて、とても楽しかった!
私にとっては不要になったものを、だれかが購入し、有効に使ってくれる。フリマはとても優れた仕組みだと思います。が、今はなかなか参加できなくなってしまって、本当に残念。
そこで、たまってしまった本は古本のリサイクルビジネスを始めた書店に引き取ってもらったりしています。実家では母が断捨離(?)を進めていて、私の子ども時代の絵本やおもちゃ、学生時代からためにためたCDなどを、私も帰省の折にかなり整理しました。父は常々「本は捨てるな!」と横からのチェックが厳しいのですが、リサイクルになるのならいいかなとこっそり選り分けています。
先日、私がMCをつとめているテレビ番組『熱中世代』(BS朝日)にゲストとしてお越しくださった作家の五木寛之さんが「断捨離はしないほうがいい」とご指南くださいました。
なぜならば……だんだん、昔のことを思い出せなくなるけれど、その時代に使っていた思い出の品を見ることで記憶が鮮明に蘇る。そういった記憶を喚起する物に囲まれて過ごすことこそ、豊かな時間なのだ、と。
五木さんは、若いころに奮発してオーダーメイドした靴を、今も捨てずに大切にしていらっしゃるそうです。それを見ると、そのころ自分が何をして、どんなことを考えていたのかなど、いろいろと思い出せる道具でもあるからとのことで、そのように楽しく回想することこそが、歳を重ねてからの人生の醍醐味なのだとおっしゃっていました。
そううかがってから、何でも整理すればいいというものでもなく、自分と関わりの深いもの、思い入れの深いものを残すことにも意味があるのだと思うようになりました。
たとえば、我が子が幼稚園で使っていたリュックサックや手提げのバッグ。もうずいぶん汚れていますが、私が自分で縫ったものなんです。今、そのリュックサックを見ると、夜中に目をショボショボさせながら刺繍したことや、その頃の子供の様子など、鮮やかに思い出されます。こういうものは、やっぱり捨てられませんよね。
子ども用品のリサイクルが近所つきあいを深める
思い入れの深いもの以外は、小さなお子さんのいる方にまとめて差し上げたり、リサイクルショップに引き取ってもらったりしています。我が家も、以前はママ友からたくさんおさがりをいただきました。4〜5歳児の靴なんてあっという間に履けなくなります。ほとんど新品同様、有効に使わせていただき、ありがたい限りです。
こうした子ども用品のリサイクルを通して、新しいネットワークも生まれました。大人同士だと遠慮した距離感のお付き合いだったのが、子育てという共通点が生まれ、おさがりをいただいたり差し上げたりしている間に、いろいろな情報交換をするようになりました。あそこの小児科どうですか?とか、お稽古事の教室情報などなど。不思議なものですね。
世の中、断捨離ブームですが、捨てることからつながるご縁もあるように思います。リサイクルは、まさに情報交換から始まりますものね。
文/進藤晶子(しんどう・まさこ)
昭和46年、大阪府生まれ。フリーキャスター。元TBSアナウンサー。現在、経済情報番組『がっちりマンデー!!』(TBS系)などに出演中。