取材・文/小坂眞吾(サライ編集長)
10月6日、大阪・あべのハルカス美術館で開幕した大英博物館共同プロジェクト『北斎-富士を越えて-』。たまたま京都出張があったので、これ幸いと大阪まで足を伸ばして観てきた。
同美術館は、大阪を一望できる超高層ビルの16階にある。まずはビルの2階から、シャトルエレベーターで16階へ。ドアが開いて驚いた。美術館前の広いスペースに、北斎が描いた龍のごとく、人がとぐろを巻いている。3連休の中日ということもあって、あるていどの混雑は覚悟していたものの、まさかこれほどとは。
よく見ると、とぐろを巻く行列は2本。ひとつは美術館の入場待ちなのだが、もうひとつは入場チケットの購入のために並んでいるのだ。
すっかり油断して前売りを買ってなかった私は、やむなくチケット購入列の最後尾へ。スマホで支払いを済ませてチケットレスで入場できるシステムもあるのだが、並ぶのも話のタネになってよかろうと思ったしだい。
結局、チケット購入に40分、入場待ちで30分。計1時間以上待って入場した。
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会場内は比較的空いていて見やすい。人が滞留するのは最初の部屋の説明書き付近と、冨嶽三十六景などの有名浮世絵の部屋。私の目当ての晩年の肉筆画は、いちばん最後の部屋にあって、人が少ないので至近距離からじっくり拝見できた。
この部屋の最後に展示されていたのが、『雪中虎図』。亡くなる3か月前に描いた、最晩年の肉筆画だ。発売中の『サライ』11月号で大きく掲載したこともあって、校了までに何度も見ているのだが、この絵には腑に落ちない点がいろいろあった。
まず虎と題しながら、虎に似ていない(かといって、猫とも獅子とも麒麟とも違う)。体の模様も虎とは違うし、顔も独特。雪の上を駆けているのに、足跡はなく、宙に浮いているよう。上空を見上げて、波打つような体のポーズも不思議だ。
最後の部屋を徘徊しながら、3度目にこの『雪中虎図』と向き合ったとき、やっとひらめいた。
これは虎ではない。命そのものだ。重力から解き放たれ、天の高みを目指す北斎自身の姿なんだ。そう思ったらなんだか泣きたくなった。会場に来てよかった。
浮世絵は版画、つまり印刷物なので、『サライ』本誌でもその魅力はあるていど伝えられる。でも肉筆は残念ながら難しい。
せっかく展覧会場に足を運ぶのなら、ぜひとも肉筆画をこそ、じっくり観てほしいと思う。
【展覧会概要】
『大英博物館 国際共同プロジェクト 北斎-富士を超えて-』
■会期:2017年10月6日(金)~11月19日(日)※会期中展示替えあり
■会場:あべのハルカス美術館
■住所:大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階
■電話番号:06・4399・9050
■Webサイト:http://hokusai2017.com/
■開館時間:火~金曜日は10時から20時まで、月・土・日・祝日は18時まで(入館は閉館30分前まで)
■休館日:10月10日(火)、16日(月、23日(月)、30日(月)、31日(火)
※発売中の『サライ』11月号では、葛飾北斎を大特集。作品の数々をとおして北斎の圧倒的な画力と異次元の創造力を余すことなく紹介しています。
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