平安末期(12世紀後半)に丹波国(現・篠山市今田)で創製された丹波焼。当初は壺・甕(かめ)・擂鉢(すりばち)などの実用品を製作していましたが、室町後期から江戸初期には徳利や茶道具も新たに製品として加わりました。
室町後期までの丹波焼の特徴は、明るい赤茶色に焼きあがった土肌や、焼成中に薪の灰が降りかかって溶けた緑色の自然釉にありました。それが江戸前期になると、「赤土部(あかどべ)」と呼ばれる赤茶色の化粧土が登場し、江戸後期には白い化粧土を用いたもの、さらにその上に赤や緑の絵付けを施したものが登場するなど、さまざまな装飾技法が柔軟に取り入れられました。
一方、三田焼は篠山の南に位置する三田(さんだ)において、江戸中期の宝暦年間(1751—64)に生まれました。同地に志手原窯(しではらがま)が開かれたのがその始まりとされています。寛政11年(1799)には三田の商人、神田惣兵衛が出資し、三輪明神窯が開かれ、その際に招聘された欽古堂亀祐(きんこどう・かめすけ)によって土型で成形する技術が導入されました。
今では緑色の釉薬が施された青磁が代名詞となっている三田焼ですが、そのほかにも、青い顔料で文様を描いた染付、赤や緑の絵付けを施した色絵など、さまざまな技法が駆使されています。
素朴で豪快な丹波焼と、流麗で繊細な三田焼。兵庫県の丹波地方が誇るこの二つの特徴ある焼き物を一堂に観ることができる展覧会が、兵庫陶芸美術館で開かれています。(~2017年5月28日まで)
森基(もり・はじめ)氏が50年にわたり精力的に収集したコレクションから、丹波焼77点と三田焼82点を選りすぐり、参考作品も合わせた計164点が紹介されます。
本展の見どころを、兵庫陶芸美術館の学芸員、梶山博史さんにうかがいました。
「森基コレクションには、丹波焼と三田焼それぞれの特徴を明快に示す典型的な作例が、満遍なく含まれています。従って、丹波焼における装飾技法の変遷をたどることや、三田焼の豊富なバラエティーをご覧頂くことができる、入門編と言える展覧会です。
また、典型的な作品だけでなく、これまでにあまり紹介されたことがなく、類例も少ない珍品が複数含まれているのも、森基コレクションの魅力のひとつです。今回の出品作品を一堂に観覧できるのは、当館の会期中に限られます。
丹波焼と三田焼の魅力を存分に知って頂ける絶好の機会です」
ぜひ会場で、兵庫県が誇る二つの名窯の魅力を見比べてみてください。
【特別展「丹波焼と三田焼の粋を集めて-森基コレクションの名品-」】
■会期:2017年3月4日(土)~5月28日(日)
■会場:兵庫陶芸美術館
■住所:兵庫県篠山市今田町上立杭4
■電話番号:079・597・3961
■WEBサイト:http://www.mcart.jp
■開館時間:3月31日までは10時~18時、4月1日から5月28日までは10時~19時、4月29日から5月5日までは10時~21時(いずれも入館は閉館30分前まで)
■休館日:月曜日(ただし3月20日は開館)、3月21日(火)
■料金:一般1000(800)円 大学生800(600)円 ( )内は20名以上の団体料金、高校生・高齢者・障がい者は割引あり、中学生以下無料、
■アクセス:JR福知山線相野駅より神姫グリーンバス「兵庫陶芸美術館~こんだ温泉~清水寺」行きで「兵庫陶芸美術館」下車
取材・文/池田充枝