
ライターI(以下I):『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(以下『べらぼう』)が終了して1週間経ちました。じわじわ、じわじわロスです。
編集者A(以下A):年末恒例の大河ドラマ総集編が放送されるのが12月29日だそうです。大河ドラマファンにとっては総集編の放映終了を以てして1年を締めくくるという年末行事になっています。総集編の見どころをざっとおさえてみましょう。
後に歌麿になる少年唐丸に注目

I:『べらぼう』第1回から登場した少年唐丸(演・渡邉斗翔)に注目です。明和の大火の際に、蔦重(演・横浜流星)に助けられた少年です。後に喜多川歌麿(演・染谷将太)になるわけですが、当初は、「この少年は写楽になるの? それとも北斎?」という「推理」もありました。結局、少年は、喜多川歌麿になるわけですが、後の歌麿とわかって振り返ると、さまざまな場面に「気づき」が感じられると思います。
A:唐丸少年に関しては、演じていた渡邉斗翔(とわ)さんの姿を改めて記憶に刻んでおいてほしいと思います。彼は現在13歳。2024年の『光る君へ』でも藤原道長(演・柄本佑)の次男巖君(後の藤原頼宗)を演じて注目を集め、『べらぼう』の唐丸少年役で2年続けて大河登場ということになります。
I:この年齢で2年連続というと、『豊臣兄弟!』で織田信長を演じる小栗旬さんの経歴と重なる部分がありますね。
A:そうなんです。小栗旬さんも12歳で『八代将軍吉宗』で14歳の水戸藩主徳川宗翰(むねもと)役で「大河デビュー」を果たし、翌年の1996年に『秀吉』で石田三成の少年時代「石田佐吉」役を演じました。その流れで2009年『天地人』では石田三成役を演じてもいます。
I:ということを考えると、渡邉斗翔さんの今後に注目ですね。『べらぼう』総集編でその姿を記憶に刻んでおきたいですね。
A:『べらぼう』第1回で登場した明和の大火の火元は、今も東京目黒区にある大圓寺です。JR目黒駅から行人坂を下った途中にあります。芸能プロダクションのホリプロ本社も近く、さらに『べらぼう』劇中でも紹介された黄表紙『金々先生栄花夢』の舞台となった目黒不動尊も徒歩圏内です。目黒不動尊で当時名物だった粟餅はないですが、毎月28日の縁日は今も続いています。
大河レジェンド俳優と『べらぼう』

I:『べらぼう』には、石坂浩二さん、里見浩太朗さん、渡辺謙さんなど時代劇や大河ドラマのレジェンド俳優の登場も注目されました。
A:私は、初めて大河ドラマを通しで見たのが『草燃える』(1979年)なので、石坂浩二さんにはひとかたならぬ思い入れがあります。『べらぼう』では、ゲジゲジ眉毛が印象的な老中松平武元を演じてくださいました。
I:須原屋市兵衛役を演じた里見浩太朗さんと蔦重との絡みは、時代劇ファンにとっては最高の絡みだったのではないでしょうか。
A:そうですね。民放で時代劇がたくさん放映されていたころのスターですし、日本テレビが「年末時代劇スペシャル」を放映していたころには里見さんは数多くの作品で主演していましたからね。そうしたベテランと横浜流星さんの絡みは、ほんとうに「お宝場面」のようなものですから、総集編で再確認して、まぶたに焼き付けたいですね。あ、そういえば里見浩太朗さんが初めて大河ドラマに登場した『炎立つ』(1993年)が「NHKオンデマンド」で視聴できるようになりました。里見さんが阿弖流為(あてるい)と安倍頼良(後に頼時に改名)を演じている作品で、渡辺謙さんも藤原経清役で登場しています(第一部。第三部では藤原泰衡役)。新沼謙治さんや鈴木京香さんなど東北出身の方の出演が多い作品で、第一部、第二部は私の中では「大河ドラマベスト5」に入る作品ですね。
I:さて、渡辺謙さんの話題が出ましたが、『べらぼう』劇中では、将軍家治(演・眞島秀和)と渡辺さん演じる老中田沼意次のやり取りも話題を集めました。
A:渡辺謙さんが伊達政宗を演じて、歴代大河ドラマの中で平均視聴率がトップである作品『独眼竜政宗』をめぐる感涙エピソードがありました。眞島秀和さんは米沢出身ですが、元々米沢が本拠だったのが伊達家です。「郷土の英雄」の大河ドラマということで、当時小学生だった眞島少年は毎週楽しみに『独眼竜政宗』を視聴していたそうです。
I:その眞島少年が38年後に将軍の役を得て、渡辺謙さんと共演する。涙腺の緩い私はその情報だけで目頭が熱くなりました。
A:「背景にあるもうひとつのドラマ」を噛みしめながら、その場面も総集編で確認したいですね。

平賀源内と田沼時代

I:総集編の話題は尽きることがないですね。
A:田沼意次の時代の開放的な空気が生んだ象徴的な人物が平賀源内(演・安田顕)でした。時の流れというのは残酷なもので、ずっとずっと「今」の時代が続くようでいて、人の心は、移ろいゆく。田沼時代から松平定信(演・井上祐貴)に政権が代わったことで世の中の空気がどう変化したのか。改めて確認したいです。
I:大田南畝(演・桐谷健太)らの狂歌遊びは時代の空気感を表現してくれましたよね。物語の最後にも登場した「屁踊り」などはまさに「田沼時代」を象徴したものだと思います。そして、将軍家治嫡男の家基(演・奥智哉)の死、老中松平武元(演:石坂浩二)の死、平賀源内の死など、一橋治済(演・生田斗真)の「陰謀」を改めてじっくり見てみたいです。制作陣がどういう編集を施してくるのか。それも総集編の楽しみですよね。
そして、吉原の女郎や花魁たち、特に瀬川(演・小芝風花)、誰袖(演・福原遥)も忘れられない存在です。貞さん(演・橋本愛)の登場シーンももう一度見たい場面です。なんだか、見返したい場面が多すぎませんか(笑)。総集編の尺に収まるのでしょうか?
A:当然ではありますが、蔦重を演じた横浜流星さんの「一年間の演技」にも注目です。さらに、『べらぼう』は芸人の出演者が多いことでも話題になりました。そのうち総集編でも登場するのは何人くらいでしょうか。
I:え、そこですか。総集編は12月29日午後12時15分からスタートです。「答え合わせ」しますか?

●編集者A:書籍編集者。『べらぼう』をより楽しく視聴するためにドラマの内容から時代背景などまで網羅した『初めての大河ドラマ~べらぼう~蔦重栄華乃夢噺 歴史おもしろBOOK』などを編集。11月10日に『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』も発売。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好きで、猫の浮世絵や猫神様のお札などを集めている。江戸時代創業の老舗和菓子屋などを巡り歩く。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり











