京都には酒呑み心をくすぐる老舗酒場も多い。酒場といえど、そこは京都。ハッとするような、様式美に満ちた酒場を訪ねた。

文・案内する人 江部拓弥さん (『あまから手帖』編集長)
グルメ誌『dancyu』編集長を経て、令和4年より現職に。好きな酒は日本酒とビール、好きなつまみは煮凝り。「大阪に移って一番うれしいのは、甲子園球場が近いこと」と語る甲子園ファンで、アマチュア野球の審判資格も持つ。

想像の遥か上をいく

蛸、炒皮、大根

年季の入った檜のカウンターに惚れ惚れ。その向こう側、褐色の鍋の中でおでん種が気持ち良さそうに出汁に浸かっています。采配するのは河合達也さん。明治15年創業の『蛸長(たこちょう)』の4代目です。

「長くやってますけど、うちは代々、味が違います」

河合さん、大事なことを、さらっと言い放ちます。訊けば、この日の宝袋にはパンが仕込まれ、裏種にはマンゴーもちの名前。河合さんは割烹着を纏い、首元にはピンクの蝶ネクタイ。どこかパリのギャルソンを彷彿させます。

宝袋
マンゴーもち

「おでんは伝承料理ではありません。変えてはいけないものは変えませんが、枠組みの中でいかに遊べるかも、おでんの醍醐味です」

ちなみに、河合さんに秋におすすめのおでん種を訊けば、栗。あぁ、楽しみが尽きません。

河合さんの言葉を聴きながら、映画『山猫』でアラン・ドロンが口にした「変わらないために変わる」という台詞を想い出します。

『蛸長』は変わりません。だから変化し続けています。矛盾するようで、真っ当な老舗の在り方が、ここにあります。

蛸長

店内の壁に掛かる品書きの札から選ぶか、おでん鍋の中からめぼしい種を見つけて注文する。蛸や大根といった定番でも、食材によって炊く時間も、寝かせる時間も変えていて、味の入り方も違う。裏種を所望すれば、別メニューが差し出される。おでん種300円〜。

京都市東山区宮川筋1-237
電話:075・525・0170
営業時間:7時30分〜21時30分
定休日:火曜、水曜
交通:京阪祇園四条駅より徒歩約5分

撮影/内藤貞保

サライ11月号大特集は『京都「美の神髄」』

 

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