はじめに-織田信長とはどんな人物だったのか

織田信長(のぶなが)は、尾張国(現在の愛知県)出身の戦国大名です。豊臣秀吉・徳川家康と並んで、戦国の三英傑(さんえいけつ)の一人にも挙げられ、400年以上経った今でもカリスマ的武将としての人気を誇っています。歴史小説だけでなく、ゲームのキャラクターやドラマ・映画の主人公として登場することも。2020年NHK大河ドラマ『麒麟がくる』でも、主人公・明智光秀の主君としてその存在感を放ちました。

信長の生き様は「うつけ者」「天下人」「戦国時代の風雲児」……など、様々な言葉で形容されます。また「なかぬなら 殺してしまえ 時鳥(ほととぎす)」は、彼の残虐な性格を評しているとされる句です。この逸話に加えて、創作物の中で描かれる信長像などから、彼に対して“冷徹で残忍”という印象をお持ちの方も多いかもしれません。

では、実際の織田信長はどのような人物だったのでしょうか? 史実をベースにしながら、紐解いていきましょう。

2023年NHK大河ドラマ『どうする家康』では、家康がその背中を追い続けた男、織田信長(演:岡田准一)として描かれます。

目次
はじめに-織田信長とはどんな人物だったのか
織田信長が生きた時代
織田信長の足跡と主な出来事
まとめ

織田信長が生きた時代

織田信長が生まれた時代は、武士たちが勢力争いを繰り広げた戦国時代でした。家督を継いだ信長は、次々と周囲の戦国武将らを倒して勢力を拡大していきます。彼が生きた「安土桃山時代」とは、信長と豊臣秀吉が戦国時代を終わらせ、天下を統一した時代を指す呼称です。二人の名前から「織豊(しょくほう)時代」とも呼ばれることからわかるように、信長はまさに一時代を築いた人物と言えるでしょう。

織田信長の足跡と主な出来事

織田信長は、天文3年(1534)に生まれ、天正10 年(1582)に没しています。その生涯を出来事とともに紐解いていきましょう。

織田家に生まれ、尾張国を統一する

織田信長は、天文3年(1534)尾張守護代の奉行の家に生まれました。父は織田家の家老・織田信秀(のぶひで)。父・信秀は傑出した武将で、尾張・勝幡(しよばた)城に拠り、経済力や信仰を背景に一族の中でも優越した存在とされます。

信長が元服して「織田三郎信長」と名乗った5年後の天文20年(1551)、父・信秀が急逝。一族との対立、今川氏との対決という課題が残ったまま、家を継いだのが18歳の信長でした。信長は親族衆と連携しつつ、敵対する一族を各個に撃破していきます。弘治元年(1555)清須城を奪い、その後反逆を企てた弟・信行(のぶゆき)を殺し、尾張国をその支配下に収めたのでした。

清州城前の公園にある織田信長像
「桶狭間の戦い」に出陣する姿を模した銅像で、桶狭間の方向を見据えている

「桶狭間の戦い」に勝利し、室町幕府を再興させる

永禄3年(1560)、駿・遠・三の三か国の大軍を擁して西上する今川義元を、桶狭間に奇襲してこれを倒し(=桶狭間の戦い)、一躍武名をあげます。その後、今川氏の支配から脱した三河の松平元康(のちの徳川家康)と同盟を結び、元康に東方の防衛を委ねると、自らは西方進出のため美濃攻略を開始しました。

桶狭間古戦場公園にある織田信長・今川義元像

翌年、小牧山(こまきやま)に居城を移し、斎藤竜興(たつおき)を攻めて降しました。信長は本拠を移して「岐阜」と改め、有名な「天下布武」の朱印もこのころから使い始めたとされます。そんな信長のもとに、正親町(おおぎまち)天皇から尾張・美濃にある御料地の回復を委嘱し、信長のことを「古今無双の名将」とほめたたえた綸旨が届けられました。これと前後して、前将軍・足利義輝(よしてる)の弟・義昭(よしあき)から室町幕府の再興について依頼を受けたのでした。

岐阜城
金華山(きんかざん)山頂に位置し、難攻不落の城としても知られる。

将軍と対立し、室町幕府を倒す。次ページに続きます

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