取材・文/ふじのあやこ

一緒にいるときはその存在が当たり前で、家族がいることのありがたみを感じることは少ない。子の独立、死別、両親の離婚など、別々に暮らすようになってから、一緒に暮らせなくなってからわかる、親やきょうだいのこと。過去と今の関係性の変化を当事者に語ってもらう。
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株式会社キャリアデザインセンターが運営する「女の転職type」では、「ジェンダーギャップ」についてのアンケート(実施日:2025年2月6日~2月21日、有効回答数:働く女性618人、インターネット調査)を実施。アンケートにて、「今の職場にジェンダーギャップ(男女格差)がある?」と聞いたところ、「ややあると思う」(39.0%)、「非常にあると思う」(20.2%)を合わせると約6割の人が「ある」と感じていることがわかった。次いで、「『女性であること』が理由で、職場で経験した(感じた)ことは?」の問いに対して、最も多かったのは「給料が低い」(40.0%)で、2位が「給料が上がりにくい」(36.1%)、3位が「お茶出し、掃除などを任される」(33.9%)となっている。
今回お話を伺った遥香さん(仮名・43歳)は、家でも職場でも女性軽視を受けることが多かったという。
父が期待していたのは兄だけ
遥香さんは両親と5歳上の兄がいる4人家族。兄は遥香さんよりも優秀で、親の期待を一身に背負っていた。遥香さんはそれを羨ましく思っていたと振り返る。
「父親は私にとても優しかったのですが、それはただ愛でるだけの対象といった感じでした。父親は私の成績なんて気にしたことはありませんでした。それなのに兄には中学から受験させて、進学する高校や大学にも口を出していました。私も中学のときに1教科だけ学年トップの成績を取ったことがあって、それを父親に伝えたら『へぇ~すごいな』という一言だけでした。私には期待していないことがそのときに明確になりましたね」
習い事にも差があった。兄は塾や英語、遥香さんはピアノに水泳だったという。
「兄には習い事から帰ると父親に塾や英語の課題を見てもらう時間がありました。私は家でピアノを練習する時間もあったけれど、父親が帰るまでに練習を終えるようにと母親から言われていました。実家はマンションだから夜の練習はご近所に迷惑がかかるなどはあったと思いますが、父親がいる週末も弾いたらダメでした。でも、兄は英語の習い事で歌のテストなどがあったのですが、その練習にも父親は付き添っていました。私のピアノがどこまでうまくなっているのかなんて、ピアノの習い事をやめるまで聞かれたことはありませんでした」
そんなきょうだいだったが、仲は悪くなかった。勉強も家では兄に見てもらっていたという。
「私は中学3年の2学期以降にやっと塾に行かせてもらえたのですが、それまでは宿題でわからないところがあると兄に聞いていました。なんとなく、父親は兄のことで忙しそうに見えて、聞けなかったんです。兄は丁寧に教えてくれました。兄は学校の宿題や塾などの課題に追われていたはずなのに、私のことを邪険にすることはなかったです。
家は父が帰って来るまでの1時間ほどはゲームが許されていたのですが、よく一緒に遊んでいました。兄は、父がいない時間のほうが伸び伸びしていた印象でした」
【父が兄に絶縁宣言。次ページに続きます】
