人生の最期に向け、財産やモノの整理や処分を行う“終活”のブームは続いている。俳優・泉ピン子さん(77歳)は、「終活をやってみたんだけど、死に急いでいるみたいで嫌じゃない」と語る。そんなピン子さんの終活の顛末と、俳優としての半生を綴ったエッセイ『終活やーめた。 元祖バッシングの女王の「ピンチを福に転じる」思考法』(講談社)が話題だ。ピン子さんは「私の人生はピンチを逆手にとって、這い上がってきたようなもの。今だって油断していないわよ」と語り始めた。(全3回/1回目)

1947年東京都生まれ。18歳で歌謡漫談家としてデビュー。1975年よりテレビ番組『テレビ三面記事 ウィークエンダー』(日本テレビ)で注目され、以降、俳優として活躍の場を広げる。代表作にNHK連続テレビ小説『おしん』(NHK総合)、『渡る世間は鬼ばかり』ほか多数。2025年主演テレビドラマ『花のれん』(テレビ朝日)が話題に。1988年『次郎物語』で日本アカデミー賞助演女優賞ほか受賞多数。2019年文化庁長官表彰、旭日小綬章受章。公式サイトhttps://pikikaku.jp/

最大のピンチは50代での数億の借金「金は人を惑わせる」

俳優・泉ピン子さんには、NHK連続テレビ小説『おしん』(NHK総合1983-1984年)、『渡る世間は鬼ばかり』(TBS 1990-2019年/以下・渡鬼)ほか、多くの代表作があり、誰もがその名を知る国民的存在だ。

インタビューには、ストライプのシャツに、パールのイヤリングという上品でスタイリッシュなファッションで現れた。威厳はなく、下町のおかみさんという雰囲気で、素朴な温かさを纏っていた。

まず、最新エッセイのタイトルにもある“終活”のきっかけについて聞いた。それは、二人三脚のように作品を作り続けた、脚本家・橋田壽賀子さん(1925-2021年)の死去だったという。

「橋田ママ(橋田壽賀子さん)とは、大河ドラマ『おんな太閤記』(NHK総合 1981年)、『おしん』や『渡鬼』ほか多くの作品を作りました。お互いに合うものがあって、ママが熱海に移住したこともあって、私も引っ越しちゃった。私、銀座生まれだから、最初はネオンが恋しかったわよ。

ママは本当に元気だったから、まさか亡くなるとは思わなかった。だから、ショックでしたよ。人は死ぬんだって。それで、終活をやってみようかなと始めてみたんです」

その終活は、親しい人に、ブランドのバッグや服を譲るところから始めたという。

「なんかの番組で“終活しています”と言ったら、会ったこともない人から、“終活をするなら、あなたの持っているアレが欲しいです”と連絡や手紙が殺到。その中には、私があげるまで、“欲しい、欲しい”と言い続けるのではないかと感じる人もいました。

そういう執念のようなものって伝わってくるじゃない? そのうち、ストーカーみたいになるんじゃないかと怖くなって、終活はやめました。

そこで気づいたのは、死んだ後のことなんて、どうでもいいってこと。好きなものを手元に置いて、好きに生きようと」

終活にも賛否がある。終活で子供に生前贈与をしたら、予想以上に長生きし、老後資金が不安になったなどのほか、金や土地、モノの配分を巡った紛争に発展することもあるという。

「金は人を惑わせるんですよ。欲に絡め取られて、善悪の判断がわからなくなる人は、けっこう多い。大谷翔平選手の通訳の賭博問題だってそうでしょ?

金は人を狂わせるんです。私はそういう人が社長を務める事務所に、25年以上も所属していたからよくわかります」

ピン子さんは、多くのヒット作品に出演していたが、他の俳優に比べて手持ちのお金が少ない。それでも「そんなもんか」と思っていたという。

「野村お母さん(俳優・野村昭子さん1927-2022年)に、生活費が少ないとこぼしたら、“あんた、おかしいわよ”と言われ、社長への不信感が募っていったのよ。あるとき、“独立したい”と言うと、“今までの借金を返済しろ”と鬼の形相よ。それまで娘のように可愛がってくれていたのに、いきなり敵になる。人ってホントに怖いわよ」

【ブランド物を売って、当座の生活費を凌ぐ……次のページに続きます】

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