家基(演・奥智哉)急死の衝撃。(C)NHK

ライターI(以下I):『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(以下『べらぼう』)第15回では、杉田玄白(演・山中聡)が登場しました。前野良沢らとともに『解体新書』で一世を風靡した蘭学医です。

編集者A(以下A):ドイツ人医師が著した原書のオランダ語の本を日本語にしたという功績ですね。里見浩太朗さん演じる須原屋市兵衛の「須原屋」から刊行されたわけです。ところで、ここでようやく杉田玄白です。いつ出るんだろう、もしかしたら出ないのだろうか、いや出ないってことはないよなって思っていましたが、やっぱり出てきますよね。

I:劇中でも触れられていましたが、平賀源内(演・安田顕)はもともと杉田玄白の「師筋」であったという話がなんだか切ないですね。切ないといえば「源内と田沼意次の出会い」の場面が描かれたこともジーンときますね。

A:こういう場面を見ると、なぜ意次(演・渡辺謙)は源内を家臣にしなかったのだろうか、と思ったりします。源内はもともと四国の高松藩松平家の家臣です。藩を二度までも辞しているため、藩主から「奉公構(ほうこうかまい)」が出されます。これは、追放+他家への仕官は出来ないという割と重めの沙汰。ですから新規に仕官はできなかったのです。それに加えて多才で興味の赴くままに行動する性格が、仕官向きではないということもあるのですが。

山中聡扮する杉田玄白。(C)NHK

鷹狩に出かけるほど元気だった家基がなぜ?

I:今週、衝撃的だったのは、第10代将軍家治(演・眞島秀和)の嫡男徳川家基(演・奥智哉)の急死です。当時家基は満16歳。現代でいえば高校生の年齢でした。鷹狩が大好きだったようで、頻繁に鷹狩にでかけていたといいます。健康状態も悪くなく、そのため早くから毒殺説が広まります。家基が鷹狩の後に休憩所とした品川の東海寺は三代将軍家光の時代に建立された徳川家ゆかりの寺院です。東海道の品川宿にあります。新井宿(現品川区大井)で鷹狩をした後で立ち寄ったといわれ、今も旧東海道に面してあります。

A:家基の死ですが、結論から言えば、その真相は闇の中。田沼意次による暗殺説、息子の豊千代(後の家斉)を将軍職につけたい一橋治済(演・生田斗真)による暗殺説など、諸説がささやかれています。

I:興味深いのは、諸説のなかに「ペルシャ馬に乗馬していて落馬した」という話があることですね。文政6年(1823)に来日したドイツ人医師のシーボルト著『日本交通貿易史』に記されている話ですが、どうしてほぼ半世紀後の人物であるシーボルトがそんなことを書き遺せたのか不思議ではあります。興味のある方は、国立国会図書館デジタルコレクション(シーボルト日本交通貿易史 https://dl.ndl.go.jp/pid/1122159)で確認してください(198頁)。

A:要人の不可解な死といえば、『鎌倉殿の13人』でも描かれた鎌倉幕府初代将軍源頼朝の死の真相も闇の中、本能寺の変での明智光秀の動機も長く闇の中ですし、幕末の坂本龍馬暗殺もそうですね。不思議といえば不思議なものです。

家基の死をめぐる源内の探索。次ページに続きます

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