文・写真/東リカ(海外書き人クラブ/ポルトガル在住ライター)

100%アイスランド産のシングルモルト。

火山、氷河、白夜、オーロラなど、特殊な自然環境で知られるアイスランド。最初の定住者は、この土地の過酷な気候にも屈しないタフなヴァイキングたちでした。

この土地ならではの自然の恵みを活かし、ヴァイキングから受け継がれた不屈の精神で作り上げられたアイスランディックウイスキー「フロキ(Flóki)」を紹介します。

ヴァイキングの名を冠したアイスランディックウイスキー

アイムヴァーク蒸溜所のハリー社長。

世界初のアイスランディックウイスキーを完成させたのは、アイスランドの首都、レイキャビックにある家族経営のアイムヴァーク(Eimverk)蒸溜所。創業社長のハリー・ソルケルソン(Halli Þorkelsson)氏は、100%地元の原料を使用することにこだわっています。

主原料は、小さな家族経営の農場で育った地元産のアイスランディック大麦。

アイスランドの夏は比較的涼しいため、小さな土地で育つ大麦の収穫は 11月まで行われません。つまり、非常にゆっくり育つことで、 風味がとても豊かになるそうです。

もちろん「世界で最も純粋だ」と言われる清涼な湧水も大切な原料です。

こだわりの詰まった小さな蒸溜所。

アイスランディックウイスキーのレシピを完成させるには、163回の試行蒸留、さらにはエイジング、熟成テストが必要で、2009年の創業から4年後の2013年にようやく生産が開始されました。ファミリーファームのある田舎の納屋で3年間熟成された初のシングルモルトが発売されたのは、2017年11月のことです。

ハリーさんは、みんなに不可能だと言われても諦めずに挑戦し続け、ついに完成させたこのアイスランディックウイスキーに彼のルーツであるヴァイキングのキャプテン、フロキの名前を冠しました。それは、長く暗い航海の末、当時その存在さえ不確かだったアイスランドに辿り着き、初の定住者となった彼の精神にシンパシーを感じたからです。

アイスランドを再訪できるお酒

シープダングで燻した麦芽を使用したシングルモルト。

現在フロキにはユニークなバリエーションがあります。

例えば、「フロキ・シングルモルト・シープダング(羊糞)スモークリザーブ」は羊の糞で麦芽(モルト)を燻し、香り付けしたウイスキーです。この羊の糞を燃料とした燻製方法は、木材資源が乏しいアイスランドで何世代にも渡り伝統的に行われてきました。ピート(泥炭)の燻製とは異なり、マイルドでほのかに甘いスモーキーな香りが特徴です。

「世界のどこにいても、このウイスキーを口にすれば、アイスランドの小さな農場の景色が思い浮かぶんだ」とハリーさん。

また、「フロキ・シングルモルト・アイスランティックバーチ(樺の木)フィニッシュ」は、3年間熟成させたウイスキーをアイスランドに自生する数少ない樹木であるバーチの樽に移し、3か月間寝かせて香りを移したもの。これにより、リンゴの花やアイスランドモス、ハチミツ、リコリース、ミントといったフレーバーノートが加味され、さらに、ほのかなシナモン、ナツメグ、ドライフルーツのアフターテイストを残します。

ハリーさんは、「僕たちのウイスキーを日本に持ち帰って飲んだ時に、ここへ舞い戻ってきたかのような『小さな旅』を感じてほしい」と熱く語ってくれました。

蒸溜所ツアーではウイスキーの製造過程を見学可能。

そんなアイスランドらしさが詰まった蒸溜所は英語の見学ツアーを開催しています。

ここではウイスキー以外にも100%地元産原料を使用したアイスランディック・ジン「VOR(フォア)」 やブレニヴィン(アイスランディック・アクアビット)「VITI(ヴィティ)」を製造しているのですが、ツアーでは製造過程の見学とそれぞれのお酒の試飲が可能です。

見学ツアーはサイトから予約できます。(URLは文末に記載)

現地では、最もピュアな氷のオンザロックも

バーチフィニッシュのシングルモルトを酒飲みの憧れ、透き通った氷河のかけらのオンザロックで。

さて、この蒸溜所を訪れてお気に入りのお酒を手に入れたなら、お土産にするのはもちろんですが、現地でも、氷河の破片でオンザロックと洒落てみるのはいかがでしょうか。

例えばヨークルスアゥルロゥン氷河湖から流れ出た流氷が打ち寄せられ、黒い砂浜の上できらきらと輝く「ダイヤモンドビーチ」では、氷河のかけらを1年中、拾うことができます。ダイヤモンドビーチへはレンタルカーやレイキャビック発のヨークルスアゥルロゥン氷河湖ツアーやアイスランド南部周遊ツアーで行くことができます。

カトラ洞窟の側でガイドさんにもらった氷河のかけら。

また、カトラやラングヨークトル氷河など、レイキャビックからそれほど遠くない氷河を訪れるツアーもありますので、氷を拾いたい旨をツアー申込時にあらかじめガイドさんに相談してみてはいかがでしょうか。氷が溶けないように運べるカップなどがあるといいですね。

Guide to Iceland アイスランドのおすすめ氷河ツアー(https://guidetoiceland.is/ja/book-trips-holiday/adventure-tours/glacier-hiking)などキャンセル可能なサイトから、旅行前にあらかじめ予約することをおすすめします。

Eimverk Distillery
住所:Back of the lot, Lyngás 13, 210 Garðabær, Iceland
https://flokiwhisky.is/
https://flokiwhisky.is/index.php/book-a-tour (蒸溜所ツアー申し込み)
https://www.kingsbarrel.shop/eimverk(日本代理店)

文・写真/東リカ
ブラジル、アメリカを経てポルトガル在住のライター。著書に「好きなことして、いい顔で生きていく ~風変わりな街ポートランドで、自分らしさを貫く15の物語~ 」。海外書き人クラブ会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。

 

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