17世紀初め、豊臣秀吉の朝鮮出兵に出陣した佐賀藩祖・鍋島直茂は、朝鮮の陶工たちを日本に伴いました。その中の李参平らが白い磁器の原料を有田の泉山に発見したことや、1637年の窯場の整理統合により生産体制が整ったことなどが有田の一大窯場地への始まりとされています。

やがて17世紀中期になると磁器は、カラフルな上絵具による色絵、繊細な線描と濃密な塗り埋めの染付、精緻な型を駆使した端正な器形、色とりどりの釉薬が織りなす掛け分けなど、多様な技術を編み出す革新期を迎えます。

《色絵 石畳文 皿》 伊万里(古九谷様式)江戸時代(17世紀中期)戸栗美術館蔵
《染付 丸松竹梅文 瓶》 伊万里
江戸時代(17世紀中期)戸栗美術館蔵

戸栗美術館で開催の「千変万化―革新期の古伊万里―」は、次々と移り変わっていく時代を駆け抜けた名品を紹介します。(1月15日~3月30日)

本展の見どころを、戸栗美術館の学芸員、小西麻美さんにうかがいました。

「日本初の国産磁器である伊万里焼は1610年代に朝鮮半島から技術が伝わって誕生しました。17 世紀中期頃(1640 年代 ~60 年代)はその技術的な革新期にあたり、中国からの技術の流入や製作技法の熟練によって以降の製作技術の基盤が整います。この頃登場する「古九谷様式」と呼ばれる初期の色絵様式を筆頭に、染付、成形、釉薬の掛け分けなどの様々な技を駆使した、創意豊かな作風の伊万里焼が発現しました。

《色絵 牡丹双蝶文 皿》 伊万里(古九谷様式)江戸時代(17世紀中期)戸栗美術館蔵
《色絵 梅花丸文 分銅形皿》 伊万里(古九谷様式)江戸時代(17世紀中期)戸栗美術館蔵

しかし、程なくして海外輸出が本格化。新たな販路を切り開く一方で、1670 年代には技術革新期に見られた作風の広がりは息を潜めてしまいます。

17世紀中期の技術革新期は瞬く間に過ぎ行きますが、名品多き時代でもあります。今展では装飾技法に着目し、その多様さを館蔵品約80点から紐解きます。

《染付 花唐草文 変形皿》 伊万里 江戸時代(17世紀中期)戸栗美術館蔵
《銹釉 木目文 変形皿》 伊万里 江戸時代(17世紀中期)戸栗美術館蔵

なお、会期中は本展の解説とは別に、古伊万里入門解説も実施。陶器と磁器の違いに始まり、江戸時代の伊万里焼の作り方や様式変遷といった基礎をお話しいたします」

新春にふさわしい気品漂う古伊万里の名品を、会場でじっくりご堪能ください。

【開催要項】
千変万化―革新期の古伊万里―
会期:2025年1月15日(水)~3月30日(日)
会場:戸栗美術館
住所:東京都渋谷区松濤1-11-3
電話:03・3465・0070
公式サイト:https://www.toguri-museum.or.jp/
開館時間:10時~17時、金・土曜日は~20時(入館は各閉館30分前まで)
休館日:月・火曜日(ただし2月11日(火・祝)、2月24日(月・振休)は開館)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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