ライターI(以下I):『光る君へ』第36回では、前週に一条天皇(演・塩野瑛久)と結ばれた中宮彰子(演・見上愛)が懐妊するという流れになりました。
編集者A(以下A):中宮彰子の懐妊は20歳ですが、皇后定子(演・高畑充希)も第一皇女脩子内親王(演・井上明香里)を生んだのは20歳を過ぎてから。もっともこの時は、一条天皇も16歳と若かったのですが……。当時は、左大臣道長(演・柄本佑)の御嶽詣の霊験とも喧伝されたようですが、道長が自ら難行を課したという事実は、一条天皇にとっては、相当なプレッシャーだったと思われます。
I:本当ですね。左大臣がそこまで「中宮彰子懐妊」に執念をみせているという事実は、一条天皇にとっては相当な「圧」ですよね。そして、中宮彰子は懐妊するわけですが、実の姉弟のように仲のよかった敦康親王(演・渡邉櫂)の、微妙に後宮内の雰囲気を悟っているかのような振舞い、健気でいたいけな態度にちょっと涙がこぼれそうになりました。
A:「史上もっとも皮肉な懐妊」といったら大げさでしょうか。敦康親王とさらには一条天皇の今後のことを考えると、胸に迫りくるものがあります。
I:そうした中で、花山院(演・本郷奏多)崩御の知らせももたらされます。19歳で退位した花山院はこのとき40代。退位後は諸国を巡礼するなどしていたそうです。劇中で居貞親王(演・木村達成)が「これで冷泉天皇の子は私だけになってしまった」と述懐していました。
A:第63代村上天皇の第一皇子が冷泉天皇(63代)で、第二皇子が円融天皇(64代/演・坂東巳之助)。冷泉系と円融系が交互に継いでいくという流れだったのでしょう。ちなみに和泉式部(あかね/演・泉里香)と恋仲になった為尊親王と敦道親王はいずれも冷泉天皇の皇子ですから、一気に冷泉系の皇子がいなくなったという状況になります。
I:このとき「円融系の一条天皇」の東宮は「冷泉系の居貞親王」。藤原行成は、居貞親王が即位した場合には居貞親王の皇子敦明親王ではなく、一条天皇の皇子である敦康親王が東宮になると予想していました。
A:皇位をめぐる悲喜こもごもがここから始まることになります。
【藤式部と中宮彰子の関係。次ページに続きます】