藤式部と中宮彰子の関係

I:中宮彰子がすっかり藤式部(まひろ/演・吉高由里子)に信頼を寄せるようになりました。藤式部は中宮彰子に白居易の『新楽府』を進講します。「人の心の好悪  はなはだ常ならず 好めばもううを生じ にくめば疵を生ず」というのは、「人の道」を説いているわけです。

A:藤式部が中宮彰子に進講したのは事実なのですが、中宮彰子に進講する人物の人選に道長が関与していないとは思えませんので、道長はやはり藤式部の才能を認めていたのでしょう。劇中では、中宮彰子が藤式部を優遇することに、女房たちがぐちぐち文句を言っている場面も登場しましたが、知識として「人の道」について理解していると思われる女房たちも嫉妬する気持ちを抑えられないというのが「人間の性」を表現しているようで面白いです。

I:学問ができて、優秀な成績で中央官庁に入り、県知事となったエリートだったら「パワハラはNG」であるという知識は持っているはずです。知識としてわかってはいても実際には自制することができないということが、現代でも起こっています。人間の性は古今問わず変わらないということなのでしょう。人の心をもっともざわつかせる最大の要因は「人間関係」だとよく言われます。1000年前も今も人々は人間関係に悩まされるわけなんですね。

A:そうした心はやがて、粗探しに転じることがあるということを体現してみせたのが、左衛門の内侍(演・菅野莉央)。こともあろうに「左大臣様のまなざしと藤式部のまなざしが絡み合っていて、もうたまりませんでしたよ」と吹聴します。この場面から得られる教訓は「壁に耳あり、障子に目あり」でしょうか。1000年たった現代には、さらに音声を収録されたり、動画を撮影されるというリスクも加わりました。

『紫式部日記』の誕生。次ページに続きます

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