店の看板メニューである「やわらか骨付きチキン&道産野菜のスープカレー」1480円。ご飯はターメリックライス。

スパイス香る軽やかなスープと甘みが強い野菜の組み合わせ

北海道のほぼ中央部に位置する富良野。7月上旬からは紫の絨毯を広げたようなラベンダー畑と、標高2000m級の雄大な十勝岳の美景を楽しむことができる。なかでも花人街道と称される国道237号沿いは、ラベンダー以外にもポピーやサルビア、マリーゴールドなどが咲き乱れ、北海道の夏を象徴する彩りに溢れる。

風にそよぎ、すっきりと爽やかな香りが漂う富良野市のラベンダー畑。8月になると株の保存のために刈り取りが始まる。

富良野散策の途中でぜひ立ち寄りたいのが、地元民が行列を作るカレー店『ふらのや』である。道産野菜をたっぷり使ったスープカレーが自慢の店だ。

スープカレーは大きめの具材とサラサラと粘り気のないスープが特徴のカレー。いまや日本のカレーを代表する料理のひとつだが、もともとは北海道・札幌で生まれたご当地カレーである。その原点は、1970年代初めに、喫茶店『アジャンタ』の店主が漢方の薬膳スープとインドのスパイス料理を組み合わせた「薬膳カリィ」を販売。その後、カレー店『マジックスパイス』がスープカレーの名前で売り出した。2000年代になると工夫を凝らしたスープカレー専門店が増え、北海道から全国へと大きなブームとなった。

スパイスと辛さは別のもの

カレーの具材となる基本の野菜は、人参、ピーマン、ジャガイモ、キャベツ、茄子、南瓜。ほかに季節によりスナップエンドウや蓮根などが入る。スープに溶け込む玉ねぎの甘さが全体をまろやかにまとめる。

スープカレーの美味しさはしっかりした出汁の旨さにある。『ふらのや』のスープカレーは、豚骨をベースに鶏や牛、香味野菜を加えて12時間煮込むブイヨンが決め手だ。これに大量の玉ねぎと数種のスパイスを加えたペーストを10時間かけて作り、合わせている。

「私が辛いのが苦手なので、スパイスの風味や香りを出して、誰もが美味しく味わっていただけるようにしています」と話す店主。カレーはけっして辛いだけのものではないことがよくわかる。

店ではスープカレーとカレーの両方を提供。旨みが凝縮したブイヨンにカレー用のルーを投入し、滑らかになるまでよく混ぜる。
素揚げした野菜などを盛り付け、ガラムマサラ、カイエンペッパー、香り付けのバジルを加えたスープカレーを注ぐ。

辛みは最後に加えるカイエンペッパー(辛みの強い赤唐辛子の香辛料)の分量により、10段階から選ぶことができる。辛み2のスープカレーを口に運ぶ。スパイスの清涼感と複雑で豊かな香り、軽やかな味わいが流れるように体に沁み込んでいく。具材の野菜は、煮込んだ人参と素揚げしたジャガイモや茄子、ピーマン、南瓜、さらに軽くスープで煮たキャベツが基本。夏に甘みが増す、大地の力を得た道産野菜もしっかり味わいたい。

ふらのや

開店は平成20年。

北海道富良野市弥生町1-46
電話:0167・23・6969
営業時間:11時30分~21時(最終注文20時30分)34席。
定休日:不定
交通:JR根室本線富良野駅より徒歩約14分

※この記事は『サライ』本誌2024年8月号より転載しました。

『サライ』2024年8月号特集「この夏、カレー三昧」

 

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