正しい意味を理解し、適切に漢字が使えているのか、疑問を感じることが増えていませんか? 適当に漢字を使ってしまい、気付かないところで「恥をかいている」ということがあるかもしれませんね。
Google 先⽣やデジタルデバイスの出現により、便利になった反⾯、情報の中⾝については⼗分な吟味が必要な時代になっております。あなたの“漢字の知識”は確かでしょうか? もう⼀度、確認しておいてもいいかもしれません。
「脳トレ漢字」第219回は、「概ね」をご紹介します。「概」という漢字に含まれる意味を知っていると、何となく読み方が分かるかもしれません。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「概ね」とは何とよむ?
「概ね」の読み方をご存知でしょうか? 「がいね」ではなく……
正解は……
「おおむね」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「だいたいの趣旨。あらまし。」「その状態が大部分を占めるさま。だいたい。おおよそ。」と説明されています。「進捗は概ね順調だ」「話の概ねは理解してもらえたと思う」などのように使われる、「概ね」。
「大旨」「概」と表記されることもあるそうです。
「概ね」の漢字の由来は?
「概数」「梗概(こうがい)」などに使われている、「概」。この漢字を構成する「既」には、「いっぱいにつまる」という意味が含まれるそうです。そのため、「概」は「ますの中に盛られた穀物を、平らにならす棒」を表しているとされ、それが転じて「おおむね」「あらまし」という意味になったと考えられています。
漢文訓読とは?
「だいたい」という意味として使われる「概ね」。元々漢文で使われていた言葉を、日本語に合うように読み方を変えたと考えられています。このように、中国語で書かれた原文を日本語の文体に置き換えて読解する方法を「訓読」といい、学校で習う漢文もこれにあたります。
漢文の訓読は古来より行われていたと考えられており、平安時代中期に清少納言によって書かれた随筆『枕草子』の中には、原文と訓読文が使い分けられている箇所が複数あるそうです。このことからも、彼女がいかに才知に長けていたかを窺うことができます。
送り仮名の使い方や返り点(レ点や上下点など)が一般的に使われ始めたのは明治時代に入ってからのことで、当時の文部省によって統一されました。戦後からは、当用漢字の制定や現代文の修得を重視する考えのもと、比較的理解しやすい書き下し文が広く使われるようになり、現在にいたります。
読解法は違っていても、長い歴史の中で親しまれた漢文は、日本の古典ともいえる重要な学問の一つではないでしょうか?
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いかがでしたか? 今回の「概ね」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 明治、大正時代の文豪・森鴎外は、講義ノートを漢文でとっていたという逸話が残されています。
苦手な方も多い漢文ですが、改めて学習してみると、奥深さを感じることができるかもしれませんね。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB
参考資料/『デジタル大辞泉』(小学館)
『日本国語大辞典』(小学館)
『日本大百科全書』(小学館)