取材・文/ふじのあやこ

写真はイメージです。

一緒にいるときはその存在が当たり前で、家族がいることのありがたみを感じることは少ない。子の独立、死別、両親の離婚など、別々に暮らすようになってから、一緒に暮らせなくなってからわかる、家族のこと。過去と今の関係性の変化を当時者に語ってもらう。

今回お話を伺った麗子さん(仮名・42歳)は子どもの頃から生きづらさを感じており、大人になってからADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断され、ASD(自閉スペクトラム症)の傾向もあると医師から伝えられている。

リサーチ機関「パステル総研」を運営する株式会社パステルコミュニケーションでは、父子関係の困りごとを解析するアンケート調査(実施日:2024年5月17日~5月19日、有効回答数:136人、インターネット調査)を実施。父子関係に困っている母親は90.4%と高い数字になっており、具体的にどんな困りごとがあるのか聞いたところ、「父親が子どもを否定すること」との回答が47.2%で一番多かった。

麗子さんは小さい頃から落ち着きがない、集中力がないと親などから注意を受けることが多く、特に父親からは手をあげられるなど、容赦ない叱責があったという。

父は偉そうで威圧的。とにかく怖かった

麗子さんは両親と2歳下に妹のいる4人家族。父親は麗子さんにとっては絶対的存在だった。

「父親がとにかく怖かったんです。父親はあまり話す人ではなかったのですが、口を開くと、大きな声で命令してくるなど、とても威圧的だった。『お前はだからダメ』『なんでできないんだ』『だらしない』といったことを言われ続けて、いつもそれが何に対してなのかわかりませんでした。でも、何について怒られているのかを聞いたことがあるんですが、その行為がさらに父親を怒らせてしまって、もう二度とできなくなりました。ごめんなさいと謝り続けるだけでした」

母親も妹も父親に歯向かうことなく、従っていた。また、小さい頃から高校生になるまで家には雑種の大型犬がいたが、父親の前では弱々しく鳴くことしかなかった。

「私は父親のことが怖かったのですが、妹はそんな父親を嫌っていて、母親は『言うことを聞いていたほうが楽だから』と父親がいないところで言っていました。

犬のシロ(名前)は父親の姿を見ると、おびえるように大きな体を小さくさせていました。シロを家の中に入れることは禁止されていたんですが、たまに父親がいないときは家の中にシロを入れて、一緒に過ごす時間が大好きでした。ご飯の時間も自由になり、ピザのデリバリーをしたり、近くのファーストフードをお持ち帰りして3人で笑いながら食べることができていました。その時間が、家族と一緒に過ごす時間の中で1番楽しかったです」

麗子さんは幼稚園の頃から団体行動が苦手で特にじっとできない子どもだった。通信簿には「もっと先生の話を聞きましょう」とよくコメントされていたという。

「授業中も友だちと話したいと思ったら話しかけてしまって、授業中に注意を受けることがよくありました。一番じっとできなかったのは、体育館などに椅子を用意されて、誰かの講演などを聞くとき。立って聞く場合には足を自由にできたりするのですが、ずらっと椅子を並べられている状況では隣の人の椅子との隙間もなく、動けないんです。だから貧乏ゆすりのようなことをしてしまったり、隣の人に話しかけてしまったりしていました」

【成績が落ちたことによって父親から手を出されるようになった。次ページに続きます】

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