ライターI(以下I):藤原為時(演・岸谷五朗)が国司として越前に赴任している関係で、越前紙の制作シーンが登場しました。越前紙は高級紙の代名詞といわれる紙で、現在も作られています。
編集者A(以下A):こうやって大河ドラマで紹介されると、越前紙でちょっとご無沙汰している人に手紙でも出したくなりますね。
I:近年手紙を書く機会などめっきり少なくなりましたから、もらった方もびっくりするかもしれないです。ちょっとしたサプライズになるかもしれませんね。
A:もう少し先の話になりますが、『源氏物語』で、道長提供の和紙は当時都に租税として納めれられていた越前紙だった可能性もあるとかないとかいわれているようです。
I:さて、為時は租税として納められる越前紙を視察しているようでした。例によって決まった租税以外は受け取らない姿勢を貫きました。藤原宣孝(演・佐々木蔵之介)が大宰府に赴任していた際に上手に私腹を肥やしたことを得意げに語っていましたが、やっぱり為時は世渡り下手だったんですね。
A:その辺のさじ加減ができない人だったのでしょう。やりすぎると「尾張国解文」で農民らから訴えられた尾張国司藤原元命(もとなが)のように除目で解任されますし。しかし、歴史の面白いのは、これだけ清廉だった為時の子孫が平清盛の時代には、各地の国司を歴任して財を成し、成功(じょうごう=寄進することで官位を得る売官制度のようなもの)によって昇進し、さらに清盛に気に入られて公卿に列するわけです。
I:2012年の大河ドラマ『平清盛』で岡本信人さんが演じた藤原邦綱ですね。権大納言!
A:手練れの国司たちは、競って、その益を上級貴族である公卿らに寄進していました。それもまた才覚だという時代です。為時は、宣孝に吹き込まれたのかとまひろ(演・吉高由里子)を叱責していましたが、やはり為時は当時の感覚では変わり者ということなんでしょう。
I:清濁併せ吞むことができる宣孝との対比が鮮明ですよね。
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