愛らしいから、癒されるから、生態の不思議に迫りたいから……など、動物園や水族館に出かける動機は人それぞれ。贔屓に出会える“いきもの”についてとくと紹介。
【クラゲ】
英名:Jellyfish
分類:刺胞動物門、有櫛動物門
傘径:数mm〜100cm
特徴:90%以上が水分のゼラチン質で、ほとんど遊泳せず水中を漂う。顔、脳、骨、心臓、血液はない。
鶴岡市立加茂水族館は1930年に開館した民間の水族館が前身。1964年、現在地に移転し、新築されて当初は賑わいを見せるが、入館者数が次第に減少し長い低迷期を迎える。
1997年、サンゴの企画展の際に、たまたま水槽で泳いでいたサカサクラゲの赤ちゃんを展示したところ評判になった。それからは、さまざまな工夫によりクラゲを育て、少しずつ増やしていき、クラゲの水族館への脱却を図った。
2014年に新館(別名「クラゲドリーム館」)が竣工、今では鶴岡の一大名所になり、国内外から多くの来館者でにぎわう。
現在、同館で展示されるクラゲは約80種、それらを一堂に見られる施設は世界でも加茂水族館だけである。クラゲの展示室は「クラネタリウム」と呼ばれ、各種のクラゲが照明に照らされ、明るい窓のような大小の水槽の中で漂う。
一口にクラゲといっても傘の径が25cmにもなり、ほかのクラゲを捕食する「ラクテアジェリー」から、僅か数mmの「シミコクラゲ」まで大きさや形も実にさまざまだ。光を反射しLED照明のように輝く「カブトクラゲ」(上写真)の前では、思わず見入ってしまい時間の経つのを忘れる。
そして誰もが圧倒されるのが直径5mの大水槽「クラゲドリームシアター」だ(冒頭写真)。ここにはミズクラゲのみ、約1万もの個体が浮遊する。
飼育の現場が見学できる
クラゲを美しく見せる努力を惜しまない水族館であるが、クラゲの繁殖室や給餌の現場を見学する「バックヤードツアー」(当日申し込み)を1日2〜3回開催しているのも、この館の特色だ。ツアーでは、クラゲはどこから生まれ、何を食べ、どのように死ぬのか──クラゲの一生の一端をうかがうことができる。飼育スタッフから解説を聞き、再度水槽の前に戻ると、先ほどとはまた違った感慨に包まれるはずだ。
鶴岡市立加茂水族館
山形県鶴岡市今泉字大久保657-1
電話:0235・33・3036
開館時間:9時〜17時(入館は16時まで)
休館日:無休
入館料:1000円
交通:JR鶴岡駅より路線バスで約40分、加茂水族館下車。庄内空港からタクシーで約20分
取材・文/宇野正樹 撮影/藤田修平
※この記事は『サライ』本誌2024年5月号より転載しました。