最近、パソコンやスマートフォンの普及により、⾃ら字を書く機会はめっきり減少してきました。その影響からか「読める、けれども、いざ書こうとすると書けない漢字」が増えていませんか? 以前はすらすらと書けていたのに、と書く⼒が衰えたと実感することもあります。

記事を読みながら漢字の読み書きをすることで、脳のトレーニングとなります。また、この記事を通じて、読むこと・書くこと・漢字の意味を深く知り、漢字の能⼒を高く保つことにお役⽴てください。

「脳トレ漢字」第196回は、「入内」をご紹介します。時代劇などでよく耳にする言葉ではないでしょうか? 実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。

「入内」とは何とよむ?

「入内」の読み方をご存知でしょうか? 「にゅうない」ではなく……

正解は……
「じゅだい」です。

『小学館デジタル大辞泉』では、「律令位階制で、外位から内位に進むこと。外従五位下から従五位下になるなどの例。」と説明されています。后妃が正式に内裏に参入することを意味する「入内」。現在の婚姻にあたります。

平安時代前期、関白・藤原基経(もとつね)の娘・穏子(おんし/やすこ)が醍醐天皇の女御(天皇に仕える女性)となったのち、皇后に冊立されて以来、女御の地位は高くなったそうです。そのため、女御の入内は大婚(天皇の結婚)の儀礼となり、盛大な儀式が行われるようになりました。

明治43年(1910)に制定された皇室親族令で、大婚の儀式中、皇后となるべき者(后氏)の皇居に参入する儀式を「后氏入内の儀」と呼ぶのは、平安時代以来の「女御入内の儀」に由来するとされています。

「入内」の漢字の由来は?

「入内」は、文字通り「内裏(天皇が住む一画、皇居)に入る」という意味に由来します。また、「入内」は「にゅうない」と読まれることもありますが、「じゅだい」という読み方が一般的です。

藤原詮子の生涯

女御入内の儀は、平安時代前期から始まったということが分かりました。平安時代といえば、現在放送されているNHK大河ドラマ『光る君へ』の時代にあたりますね。ドラマの中では、貴族社会の頂点に立つ藤原道長についても触れられていますが、彼が権力を掌握できたのは、姉・詮子(せんし/あきこ)の支えがあったからと言えます。

藤原兼家(かねいえ)の娘として生まれた詮子は、天元元年(978)、円融天皇の女御として入内しました。その後、懐仁(やすひと)親王を授かり、彼を一条天皇として即位させることに成功します。これにより、詮子の父・兼家は外祖父として権勢を振るうことができ、詮子自身も、皇太后という高い地位につくことができたのです。

一条天皇を溺愛していた詮子は、末弟の道長のことも大変可愛がっていたとされます。兼家の長男・道隆(みちたか)の死後、後継者争いに発展した際も、詮子は最後まで道長を支持しました。また、道長の娘・彰子(しょうし)を、一条天皇の中宮(ちゅうぐう、皇后とほぼ同格の后)につけようと画策したのも、詮子であると考えられています。

この時、一条天皇には既に定子(ていし、道隆の娘)という中宮がいましたが、詮子は道長の家系を繁栄させるべく、定子を中宮としたまま、彰子も入内させようと考えたのです。

詮子の策が功を奏し、道長は3代の天皇の外祖父となって、栄華を極めることができました。道長の日記『御堂関白記』の中には、詮子に深く感謝した道長が、彼女の供養を両親と同じように心を込めて行ったことが記されています。

また、鎌倉時代前期の歴史書・『愚管抄(ぐかんしょう)』の中にも、「詮子の計らいのおかげで、今がある」と記されているそうです。藤原氏の繁栄を陰ながら支えていたのは、紛れもなく詮子だったのではないでしょうか?

***

いかがでしたか? 今回の「入内」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 平安時代を代表する貴族である藤原道長。詮子の援助がなければ、末っ子の道長があれほど大成することはなかったかもしれません。

そのような背景なども調べていただくと、歴史がより一層面白く感じられるのではないでしょうか?

文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB

 

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