昼食の名物じぶそば2800円。焼き目を付けた鶏肉とすだれ麩 、青菜や根菜などの季節の野菜の治部煮が蕎麦を引き立てる。天ぷらや大根の煮物、羊羹が付く。

金沢を代表する特別名勝・兼六園。江戸時代の代表的な林泉廻遊式庭園で、春の桜の時期の美しさはもちろん、どの季節に訪ねても四季の移ろいと風雅な佇まいを映し出している。園内の見どころのひとつに日本最古といわれる噴水がある。この噴水の前に、令和4年の秋に新装開店したのが『兼六亭』である。カフェと食事処、茶室を備え、兼六園散策のちょうど良い休憩処となっている。

洗練された店内。カウンター席では噴水を眺めながら静かなひとときが過ごせる。コース料理もあり、夜は幻想的な庭園も魅力。

「大正7年(1918)に写真店として現在地で営業を始め、その後、茶屋になりました。改修に当たり、この場所にかつて加賀藩歴代藩主の饗応の場だった時雨亭があったことから、殿様のもてなしの心を伝えたいと思っています」と話す営業部の辻潤一郎さん(52歳)。昼食には、郷土料理の治部煮をアレンジした名物じぶそばを提供。加賀れんこんが練り込まれた特製蕎麦と甘めの出汁、治部煮のとろみ餡がよく合う。

朝食の香り立つ加賀棒茶のおかゆ膳2000円、前日までに要予約。土鍋で20分ほど炊く粥は1杯目はさらりと、2杯目以降は異なる食感が楽しめる。鰤の幽庵焼きや佃煮、漬物が添えられ、自家製豆腐、食後の抹茶と甘味が付く。

また、事前に予約すれば朝食が楽しめる。静謐に包まれる清々しい早朝の兼六園散策のあと、温かい加賀棒茶のおかゆ膳はいかがだろうか。茶の茎のみを焙じた加賀棒茶の独特の香ばしさと甘みで、食が進む。兼六園の新たな愉しみがひとつ増えた。

兼六亭

店頭には美しい藤棚がある。

石川県金沢市兼六町1-20
電話:076・261・3783
朝食9時~11時、昼食11時~、16時~、夜は予約のみ カフェ9時~16時
亭不定 30席。
交通:JR金沢駅からバスで約15分、兼六園下・金沢城下車徒歩約5分

取材・文/関屋淳子 撮影/藤田修平

※この記事は『サライ』本誌2024年4月号より転載しました。

『サライ』2024年4月号の特集第2部は『芸術建築として「国宝の城」を愛でる』。

 

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