3月16日、北陸新幹線は石川県の金沢から福井県の敦賀まで延伸開業する。これで東京からは、より北陸地方が近くなる。この機会に、春の北陸へぜひ足を運んでほしい。

地元の人々に慕われる神社には隠れた歴史が眠る

春日神社(舟津)
福井県あわら市舟津13-2 境内自由
氏子の方々により保守、保全されている。境内の脇にある展望台ふうの場所に桜が咲き、温泉街を一望できる。近年は他地域と合同で4月29日に「あわら温泉春まつり」を開催。写真/あわら市観光協会

えちぜん鉄道の三国芦原線は、福井市内から九頭竜川と並行するように日本海まで伸びる。終点の三国港駅の4つ手前が、あわら湯のまち駅。駅前から旅館が立ち並ぶ中を北に約1km、小高い丘の上に春日神社がある。74もの源泉が湧く温泉街を一望しながら桜を楽しめる。氏子総代の齋藤愛夫さん(76歳)はいう。

手前の広い畳の間が拝殿で最奥が本殿。拝殿の先にある渡り廊下のような板の間でさまざまな神事が執り行なわれる。
現在の拝殿から本殿までの建物は、境内脇の社務所とともに大正13年に皇太子(昭和天皇)御成婚を記念して建てられた。

「郷土安穏、五穀豊穣の神様です。やはり、地域をまとめる心の拠りどころですね。明治の初めに奈良の春日大社から分霊が勧請されました。同じ境内に小さな祠なのですが、薬師神社、白山神社もあります。この丘を私たちは、たいてい裏山といっていますが、3つの神社があるので『三社山』とも呼んできました」

平安時代に勧請された本荘

春日神社(本荘)
福井県あわら市中番・下番入会地 境内自由
河口荘の他の地域にも春日神社が創建され、それらの総鎮守社となった。春と秋に行なわれた例大祭では寛延4年(1751)作造の神輿が披露される。春の例大祭は毎年3月24日。写真/徳丸健一

神社の来歴は、土地の歴史を知る手掛かりとなるが、あわら市には春日神社が多い。市内91社のうち21社が春日神社だ。あわら湯のまち駅から福井市方面に2駅戻ると本荘駅。この地は平安時代まで河口荘(かわぐちのしょう)といわれ、天永元年(1110)に総社として春日神社が建立された。市内最古の春日神社である。氏子総代の徳丸健一さん(77歳)はいう。

「藤原氏の氏社が春日大社で氏寺は興福寺です。河口荘は興福寺、正確にはその塔頭の大乗院の荘園という意味。そんな縁から春日神社が勧請されました」

こうした由緒から、あわら市内でも別格の扱いを受け続けるが、本荘の人々は親しみと愛着を込めて“お春日さん”と呼ぶそうだ。春は祭りの季節。祭りが終わると境内の桜が咲き始める。

本殿は元禄12年(1699)に建立された。あわら市内に現存する寺社建築では最古の建築で福井県の有形文化財に指定されている。
拝殿の奥の両側に神社を警護する随身像がある。現在の坂井市出身で明治初期に活躍した彫刻家、山田鬼斎の作と伝えられている。

●観光情報の問い合わせ/あわら市観光協会 電話:0776・78・6767

北陸新幹線が敦賀まで開業

福井県へ延伸される北陸新幹線。東京から福井までは約2時間51分、東京から敦賀までは最短約3時間8分で結ぶ。

3月16日、これまで東京から石川県の金沢までを結んでいた北陸新幹線が、福井県の敦賀まで延伸し、新たに6つの駅が開業する。これで石川県、富山県、福井県の北陸3県をより便利に旅することができる。

東京から敦賀まで直通する「かがやき」と「はくたか」は、1日に14往復の運行を予定している。敦賀から富山間は「つるぎ」も運行される。

取材・文/藍野裕之 撮影/藤田修平

※この記事は『サライ』本誌2024年4月号より転載しました。

『サライ』2024年4月号の特集第2部は『芸術建築として「国宝の城」を愛でる』。

 

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