紫式部によって執筆された『源氏物語』は、平安時代中期に成立して以来読み継がれ、現在なお広く読まれています。
主人公の光源氏を中心に、貴族社会における栄華や恋愛模様を抒情豊かに描き、文学・絵画・工芸・芸能・香道など広い分野に影響を及ぼしました。
とりわけ物語の場面を絵画化した「源氏絵」は流派や時代を超えて数多く描かれました。
東京富士美術館の「源氏物語 THE TALE OF GENJI」展は、源氏絵を中心として作品にまつわる美術、工芸、文学作品の数々を紹介する展覧会です。(2月24日~3月24日)
本展の見どころを、東京富士美術館の広報ご担当、髙橋和之さんにうかがいました。
「本展は、4部構成で展観されます。
第一部『源氏物語』とその時代
源氏物語が成立して間もなく絵画化は始まったとされており、その豊かな表現は現存最古の源氏絵である国宝《源氏物語絵巻》(徳川美術館蔵・五島美術館蔵)に見ることができます。本章では、物語が成立した平安時代の美術・工芸品とともに模本や再現された装束を展示し、王朝文化の一端をご覧いただきます。
第二部 あらすじでたどる『源氏物語』の絵画
源氏物語は絵巻や冊子を始め、扇面・色紙・屏風などさまざまな形式で描かれました。ここでは五十四帖のストーリーにそって、土佐派や住吉派による画帖や絵巻、色紙形式の作品を中心に、あらすじを随所に織り交ぜ、物語の世界を鑑賞していただきます。
第三部 『源氏物語』の名品
本章では、一隻に一場面を大きく描く屏風形式の源氏絵や二~三場面を組み合わせて描いた屏風作品を紹介します。また、源氏絵の図様や特徴的なモチーフを取り入れた工芸品も紹介し、ジャンルを超えた広がりを見ていただきます。
第四部 近代における『源氏物語』
明治時代以降も源氏物語と紫式部はひとつの着想源としてあり続け、伝統的なやまと絵の手法を重んじつつ近代的な視点で登場人物の内面や情景に迫る作品が制作されました。また、物語の普及に大きく貢献した与謝野晶子と谷崎潤一郎の現代語訳の装丁・装画にも目を向けます。
エピローグとして、現代における源氏物語に触発された作品を紹介して最後を締めくくります。時代を超えた源氏物語の世界をご鑑賞ください」
源氏物語のあれもこれもが網羅された展覧会です。会場でじっくりご堪能ください。
【開催要項】
源氏物語 THE TALE OF GENJI ―「源氏文化」の拡がり 絵画、工芸から現代アートまで―
会期:前期2月24日(土)~3月10日(日)、後期3月12日(火)~3月24日(日)
会期中一部展示替えあり
会場:東京富士美術館
住所:東京都八王子市谷野町492-1
電話:042・691・4511
公式サイト:https://www.fujibi.or.jp/
開館時間:10時~17時(16時30分受付終了)
休館日:月曜日
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
取材・文/池田充枝