取材・文/ふじのあやこ
家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。【~その1~はこちら】
今回お話を伺ったのは、埼玉県で6歳の子供を育てながら、近所の飲食店でパート勤務をしている夏美さん(仮名・37歳)。埼玉県出身で、両親と2歳上に姉のいる4人家族。父親はサラリーマン、母親は近くのスーパーでパート勤務をする兼業主婦で、どこにでもある普通の家庭だったそうですが、21歳の時に姉が結婚し、さらに両親が離婚。1人にはできないという思いから父親との2人暮らしがスタートします。
「父親との2人暮らしといっても、顔を合わすのは夜の1~2時間ぐらい。父親は早めに仕事に行くので朝は起きたらいない状況でした。それに私は接客業なので、希望でも出さない限り週末は仕事です。高卒で入社した分、同期でも年上の人ばかりだったので週末に休むとはなかなか言えなかったんですよ」
新しい“我が家”を求めた父親の独断。賃貸から一軒家に
賃貸マンションでの2人暮らしでは父親は一緒にいる時間は努力して話している印象を受けたとか。そして、2人暮らしが3か月ほど続いた時、父親から何の前振りもなく一軒家購入の話をされたそうです。
「会話は私の仕事のことへの質問がメインで、毎日そんな質問をされても変化なんか特にないので、盛り上がることもなく……。当時私には彼氏がいたんですが、一緒に暮らし始めたばかりで父親の落ち込みとかも心配だったので外泊はしないようにしていました。でも、絶対長電話をしている様子などで彼氏がいることは知っていたと思うのに、それについては一切触れてこないんですよね。異性の親ってちょっと複雑ですよね。
そんなぎこちない2人暮らしだったんですが、借りた賃貸も3DKと広かったし満足していたんです。なのに、父親はやっぱり持ち家じゃないところが気に入らなかったみたいで、いきなり一軒家の契約書を見せてきました。びっくりしましたよ! しかも、前の家から2駅ほど離れた近場に。中古の家だから1000万ぐらいだったんですが、父親は『お金のことなら心配いらない』ともう買う気しかないんですよ。再婚でもする気なのかなって思いました」
その後、本当に一軒家を購入。ますます家を出にくくなった夏美さんはそのまま新しい実家で生活をしていたそうです。そして、28歳の時に当時付き合っていた男性よりプロポーズを受けて結婚することになります。
「結婚相手はとにかく優しい人で、彼には両親がいませんでした。そういう理由もあるのか、私の父親のことをすごく気に入っていたんです。結婚の報告の前から彼は何度も遊びに来ていたんですが、いつも最後には父親とお酒をかわして2人してベロベロになるのがお決まりのコースでした。まぁ仲が悪いよりも良いほうが嬉しいんですが、酔っぱらった時は2人して絡み酒なので面倒でしたね(笑)。でも、彼が間に入ってくれたことによって、初めて父親と長時間飲めるようになりました」
【父親と私、そして夫。2人暮らしから3人暮らしへ。次ページに続きます】