取材・文/ふじのあやこ

家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。(~その1~はコチラ

今回お話を伺ったのは、知り合いと共に借りているマンションの一室でネイルの仕事をしながら、旦那さまと高校生の娘さんとの3人で暮らしている美輝さん(仮名・44歳)。兵庫県出身で、両親と3歳上に兄のいる4人家族。成績は中の上ながら勉強嫌いで、友人から影響受けて芸術大学を目指すも受験で失敗。浪人も就職もしたくない思いから専門学校に進学を決めますが、母親はその甘い考えに大反対。しかし家族会議で専門学校進学を再度訴えた美輝さんを父親は認めてくれたと言います。

「家のことを牛耳っているのは母親で、父親が何か意見を言うことはあまりなかったんですが、父親が意見を言った時には母親は一切反対することはありませんでした。専門学校への進学も父親が認めてくれた時点で母親も認めてくれたのと同じ。母親は父親のことを私たち子どもの前で悪く言うことは一度もなくて、それは両親が仲良しだからなんだろうなってずっと思っていたんです。自分が結婚するまでは」

挫折を隠すために親に嘘をついたこともあった

専門学校ではファッションデザインの勉強をするも、ここにも自分の中途半端さがあったと美輝さんは振り返ります。

「在学中に先生からの紹介で、雑誌の撮影の手伝いをさせてもらったことがあったんです。期間は夏休みで、もちろん無償で経験を積むためだったんですが、朝が早くて、それに激務で体調不良を理由に2/3ほどで行かなくなりました。手伝いに行っていたのは大阪で、実家からだとバスがない時間に家を出なければ間に合わなかったので、父親に駅まで車で送ってもらっていたんです。父親は犬の散歩のために早起きをしているから問題ないと言ってくれていたんですが、途中で挫折してしまったことは後ろめたくて言い出すことができませんでした。先方の都合で早くに終わったと嘘をついてしまいました。本当に当時を振り返る度に、根性のないダメなやつだったんだと痛感しますね……」

手伝いを途中で行かなくなったことで先生の信頼も失くしてしまい、就職も難航するハメに。結局外部で見つけたアパレルの販売員に就職します。そして26歳の時に紹介で知り合った男性と子どもができたことがきっかけで結婚することになります。

「就職は学校に張り出されているものにも応募できて、希望者が多い場合は先生が推薦した子が受けられるんですが、先生に就職の相談することが気まずくて……。就職情報誌で見つけてきたところに応募して、何社目かで就職することができました。専門学校に行かせてもらった手前、全く関係ないところではなく、どこかファッションに関連したところに就職しなくてはという思いが強かったですね。仕事はノルマこそなかったものの、売り出し中の服を社販で買って着ないといけなくて、働き出したのにお金はいつもカツカツでした。そんな時に今の夫と知り合って、付き合って3年で結婚しました。結婚は早くしたかったというよりも子どもができたから。自分で想像していたよりも、結婚するのも親になるのもずっと早かったです」

【次ページに続きます】

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