文/鈴木拓也
多くの人が日常的に悩まされている、頭痛、肩こり、腰痛、変形性膝関節症といった体の不調。
痛む箇所は異なってはいても、その原因は「体のゆがみ」であることが多いと指摘するのは、中村接骨院(東京都)の中村弘志院長だ。
例えば頭痛や肩こりは、「体(背骨)のゆがみ」がもたらす症状の代表格だという。パソコンやスマホを毎日長時間使い続けていると、悪い姿勢になりやすく、その時点で背骨はゆがんでしまっているそうだ。これを放置すると、慢性的な痛みとして顕在化していく。そればかりでなく、背骨を通る自律神経が圧迫されて内臓の働きが鈍ったり、肺が圧迫されて息切れしやすくなったりなど、さまざまな問題ももたらす可能性が出てくるとも。
ここまでは、よその整体師やマッサージ師からも聞く話かもしれない。そして、背骨のゆがみにアプローチする施術も世の中にはいくつもある。しかし、中村院長が目指すのは「根本的なところから改善」すること。そのために着目したのが、「短回旋筋」という聞きなれない名の筋肉。これは、背骨の一番奥にある短い筋肉で、直接背骨に付着している。ここを鍛えることが、背骨のゆがみを「根本的に治す唯一の方法」であると、著書『悪い姿勢は天井を見つめて治しなさい』(ビジネス社)で力説する。
「目」から背骨のゆがみを治す
短回旋筋を「鍛える」といっても、それは身体の奥にあるうえに、筋トレで鍛えるような大きな筋肉とは、大きさも性質も異なる。そのため、何か負荷をかけて動かすのとは、まったく異なるメソッドで鍛えていく。
具体的なメソッド紹介の前に、目の重要性について簡単に触れておきたい。背骨のゆがみを改善するため、整体に通ったり、筋トレやヨガをしたが、効果がなかったり、逆に悪化したという経験をもつ人は多い。
それはなぜか?
中村院長によれば、「それは目から背骨のゆがみを治していないから」だという。姿勢に問題がある人の歩き方を映像に撮ると、悪い姿勢を反映して、傾いた不自然な歩き方をしているのがわかる。しかし、当人にとってはそうした自覚は無い。この理由について、中村院長は本書で次の説明をしている。
こうした現象が起きるのは、目からのズレている信号を、脳が補正しているからなのです。そして、一般的な背骨矯正、骨盤矯正は、そのズレを補正しないまま、表面的に顔と体の位置を正そうとしているものが多いのが現状です。(本書52pより)
中村院長のメソッドの大きな特徴は、この点にある。背骨の矯正には目を使い、目で見た映像が脳内で本当に正しい位置なのかを認識しながら、体の位置ズレも同時に矯正していく。続けていくうちに、頭部が体幹軸からブレることなく歩けるようになり、それまであった不調も解消していく。
寝ながら短時間で短回旋筋を鍛える
これ以上の専門的な話は本書に譲るとして、実際にメソッドの1つを紹介しよう。毎日1回行うだけで短回旋筋が鍛えられていき、不調も改善していく、とっておきのトレーニングとなっている。
(1)全身の力を抜いて仰向けに寝て、ひざを立てる。
(2)両目で天井の1点を見つめ、肩が上がらないように注意しながら、肩甲骨を引き寄せるようにして胸を張る。首の後ろが床につくようにする。腰が反らないように床につけて尾骨を上げる。
(3)ゆっくりと全身で脱力する。
(4)左側の肩甲骨を床に押し付ける力で、ひざを右側へ倒す。
(5)右側の肩甲骨を床に押し付ける力で、今度はひざを左側へ倒す。
(6)(4)と(5)を交互に20回ほど繰り返す。ひざが床につかない人は、姿勢が崩れないように注意しながら、両脚を左右に振るだけでいい。
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多くの人から、「痛みが消えた」「病気が改善した」など高い評価を得ているこのメソッド。「背骨のゆがみ」が原因で苦しんでいるなら、本書のセルフケアを実践してみてはいかがだろう。
【今日の健康に良い1冊】
『悪い姿勢は天井を見つめて治しなさい』
文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)に掲載している。