今や料理人として世界的に名高い、ジョエル・ロブション氏。1976年、初来日のとき日本料理に興味を持ち、以来年に4~5回のペースで足繁く日本に通っているという。
そんなロブション氏が日本酒に興味を持ったのは、友人であるソムリエの田崎真也氏の「日本酒はフランス料理に合う」という一言がきっかけだったという。
その後、日本酒の研究を重ねたロブション氏。あるとき日本料理とフレンチのコラボレーションディナーが日本とパリで開催されたとき、参加した日本やフランスの政府関係者を驚かせたのは、ロブション氏が作ったフランス料理の方が、日本料理よりも日本酒に合うという、マリアージュの見事さだった。
そのときに合わせた日本酒が、『獺祭 純米大吟醸 磨き 二割三分』(旭酒造)であった。ロブション氏は、いつか『獺祭』(だっさい)と組んで何かできるのではと思っていたという。
その思いは現実となった。ロブション氏と『獺祭』を醸す旭酒造は交流を重ね、ついに共同プロジェクトによる店を、来春パリに開店することになったのだ。
出店予定地は、シャンゼリゼや凱旋門からも近い、パリの中心地にある8区のフォーブル・サントノーレ通りで、店の名前は『ダッサイ・パー・ジョエルロブション』。3階建てで、1階は酒などの販売が中心の獺祭ブティックと獺祭バー、2階はカフェ、3階がフレンチレストランとなる。
ロブション氏によると、このフレンチレストランは三ツ星を目指すものではなく、パリの人、欧州の人、そしてパリを訪れる世界中の人に、日本酒(獺祭)とフランス料理のマリアージュの素晴らしさを楽しんでもらおうという考えなので、おつまみ的なものも多い、親しみやすい価格帯の店になるとのこと。
「美味しい酒は国境を越えて人を幸せにする力を持っている」と語るロブション氏と『獺祭』の試みは、好奇心旺盛なパリっ子たちの舌も心も躍らせるに違いない。
■直営店『獺祭ストア 銀座』がオープン
その一方で、『獺祭』を醸す旭酒造は、銀座三越のすぐそばに、京橋、山口、博多に次いで4店舗目となる直営店『獺祭ストア 銀座』を11月23日にオープンした。
今秋に社長に就任した桜井一宏氏は、銀座出店への思いを次のように語る。
「銀座店は私の社長就任以来、待ち望んでいた初めての大仕事で、出店できたことを大変嬉しく思っています。オープンを11月23日に決めたのは、私たちのフラッグシップ商品が『獺祭 純米大吟醸 磨き 二割三分』であることにちなんだものです。
私たちは常にお客様が幸せになることを目指しながら酒造りに励んでおります。と同時に、その酒を通して、私たちの酒造りへの真摯な思い、蔵のある山口の自然豊かな風土、ひいては日本の素晴らしい文化を、国内はもとより広く海外の方々にも感じていただきたいと思い続けています。
今回の銀座への出店は、そんな世界発信への思いと、基幹店舗としての大切な役割を担うものであり、世界の人々が集うサロンのような上質で華やかで、楽しい場としてもご利用いただければと思っています。銀座店では獺祭の定番商品に加え、最高峰の『獺祭 磨き その先へ』や季節限定商品などすべて揃っておりますので、ぜひ一度足をお運びください」
内装は2020年、東京五輪の新国立競技場のデザインを手掛ける隈研吾氏で、多くの建築に使用される細い竹を平行に組んだ天井に、獺祭のカラーである白を基調とした壁というシンプルなデザインが特徴だ。店内にあるガラス戸の冷蔵庫には照明がない。紫外線や人工の光は酒に悪影響を及ぼすということを伝えるためだという。
また、獺祭の酒粕や米粉などを使ったショコラやバームクーヘン、おつまみとしても楽しめる煎餅なども取り揃えている。さらに、酒をテーマにしたイベントや、異業種コラボなども随時開催し、常に新しいことを発信する魅力のあるストアになるとのことだ。(今後の店情報に関しては、『獺祭』公式サイトや公式Facebookなどから取得できる)。
日本国内はもとより、海外にも多くのファンを持つ『獺祭』。日本の酒文化を世界に広げていく担い手として、今後ますます目が離せない存在だ。
【獺祭ストア 銀座】
所在地/東京都中央区銀座5-10-2
電話/03・6274・6420
営業時間/11時~20時 不定休
※ 旭酒造公式サイト https://www.asahishuzo.ne.jp/
取材・文/田中宏幸