「あれ? なんて漢字だったっけ」と悩むことが多くなっていませんか? 少しだけ思い出す努力をしてみるものの、結局は「まあ、いいか」と諦めることもあったりして、記憶の衰えを実感することもあるのではないでしょうか? しかし、思い出すことが記憶力の鍛錬につながると言われています。
「脳トレ漢字」第158回は、「檜皮」をご紹介します。古来より、屋根葺きなどに用いられた檜皮。日本の伝統文化として世界的に高く評価されています。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「檜皮」とは何とよむ?
「檜皮」の読み方をご存知でしょうか? 「ひかわ」ではなく……
正解は……
「ひわだ」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「杉・檜(ひのき)などの樹皮。屋根に葺ふき、腰壁に用い、また槙皮(まいはだ)とともに火縄の原料とした。」と説明されています。槙皮とは、檜やコウヤマキという常緑高木の甘皮(内皮)を砕いて繊維としたものです。舟や桶などの水漏れを防ぐために、材の合わせ目や継ぎ目に詰め込んで使用します。
耐久性に優れ、屋根葺きなどに用いられることの多かった檜皮。檜皮葺(ひわだぶき)の歴史は大変古く、法隆寺の開創経緯や財産について記された『法隆寺資材帳』にも、檜皮葺に関する記述が見られます。寺社だけでなく、貴族の邸宅や内裏にも使用されていました。
「檜皮」の漢字の由来は?
「檜」という漢字に含まれる「會」は、米を蒸すために使われた土器に蓋がされていることを表す象形文字です。土器とその蓋がぴったり合うという意味から、建築用の木材に合う「ひのき」の漢字として使われたと考えられています。
また、檜は火縄の原料にされたり、神事などで火起こし用の木材として用いられたりしたことから、「火の木」と呼ばれていました。この「火の木」が由来となって、「ひのき」と呼ばれるようになったそうです。
日本の伝統「檜皮葺」
飛鳥時代には既に、建築技術の一つとして知られていた「檜皮葺」。中国や朝鮮半島から伝来した「瓦葺」とともに、日本の伝統建築工匠の技としてユネスコ無形文化遺産にも登録されています。清水寺本堂や出雲大社本殿など、国宝や重要文化財として登録されている建造物の中でも、檜皮葺の手法が見られるものは多いです。
原料となる檜皮の採取は、「原皮師(もとかわし)」と呼ばれる伝統工匠たちによって行われます。樹齢70年から80年ほどの檜が対象で、外皮だけをはぎ取って内皮を残すことで、同じ木から何度も檜皮を採取することができるそうです。
原皮師たちは、高さ30メートルにもなる檜に登り、木べらや腰ナタなどの用具を使って器用に檜皮を採取します。大変高度な技術を要するため、人材養成が難しく、さらに原皮師の高齢化なども相まって、職人の数は年々減少しているそうです。日本の伝統や文化遺産を守るためにも、早急に対処しなければならない問題であると言えるでしょう。
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いかがでしたか? 今回の「檜皮」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 古来より、日本の建築を支えてきたと言える「檜皮」。檜は香りも良く、浴槽やフレグランスにも使用されることが多いです。
暑い夏は、檜のすがすがしい香りでリフレッシュするのも良いかもしれませんね。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
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