ほのかな木の香りが芳しい。おひつのご飯は冷めても旨い
令和3年、岐阜県各務原市にて「曲物工房清水」を創業した清水貴康さんは、かつて信用金庫に勤める銀行マンだった。仕事柄、地元で働く木工職人たちと出会い、その仕事ぶりに感銘を受けて「この素晴らしい技術を絶やしてはいけない」と一念発起。退職して岐阜県立森林文化アカデミーに入学後、食に関わるものづくりを志し、おひつに用いる曲物の道に進んだ。
清水さんが作るおひつの特徴は、定番素材のヒノキに加えて、サワラ(ヒノキ科)を用いる点にある。
「ヒノキは吸湿性が高いため、ご飯の余分な水分を吸収し、ふっくら炊き立ての状態を保ちます。サワラはヒノキに似た特性を持ちつつ、香りがやや控えめ。ご飯の味を引き立てる穏やかな香り方が気に入り、天板と底板に木曽産のサワラを使用しています」(清水さん)
職人技が光るのは、側板の接ぎ手部分。型を用いて側板を曲げ輪に形作ってから一度戻し、重ねる場所がほかと均一な厚さになるよう、側板の両端をカンナで薄く削って厚みを微調整する。その後、接ぎ手部分を7~8mm幅の桜皮で編み込む昔ながらの「桜皮とじ」で接合する。
「ご飯をおひつに移しておくと、ほんのり木の香りがしてご飯のおいしさを実感できます。冷めてもおいしいので、ぜひお使いいただきたいです」(清水さん)
【今日の逸品】
曲げ輪 ヒノキのおひつ
曲物工房清水
9,900円~(消費税込み)