取材・文/ふじのあやこ
昭和、平成、令和と時代が移り変わるのと同様に、家族のかたちも大家族から核家族へと変化してきている。本連載では、親との家族関係を経て、自分が家族を持つようになって感じたこと、親について思うことを語ってもらい、今の家族のかたちに迫る。
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株式会社ソノリテは、全国のリモートワーク制度のある会社員(新卒3年目以内/転職後3年目以内、部長クラス以上(従業員500名以上規模の正社員))を対象に、「新型コロナウイルス5類引き下げに関する社員の意見」に関する調査を実施(実施日:2023年3月30日~4月3日、有効サンプル数:1029、インターネット調査)。今後もリモートワークを続けたいと思う社員は、入社3年目以内では半数以上、部長クラス以上では8割以上という結果になった。
今回お話を伺った、歩美さん(仮名・39歳)もリモートワークを望んでいるものの、週に2回以上出勤することが5類引き下げにより義務化された。彼女はコロナ禍によってより顕著になった強迫観念と強迫行動に悩まされていた。「リモートワークによって、やっと自分の行動を気にする必要がなくなってきたのに……」と語る。
家族の会話は端的が基本。会話を楽しめた記憶はない
歩美さんは東京都の郊外出身で、両親との3人家族。両親は共働きで家族の会話は事務的なものだった。端的に述べないと怒られることもあり、家族との会話を楽しめた記憶はないと語る。
「母親の仕事は週に数回のパートだったんですが、仕事をしながらご近所さんが主催する手芸の集まりに参加して、そのグループでボランティア活動なども行なっていました。だから、子どもに構う時間がなかったんだと思います。学校での出来事を聞いてほしくて母親に話しかけていたのに、『結局何が言いたいの?』と遮られたこともあって。この人(母親)は聞いてくれない大人なんだって思いましたね。近くに祖母が暮らしていたので、話はいつも祖母に聞いてもらうようになっていました」
父親に関しての話が一切なく、聞いてみても「よく知らない」と歩美さんは答えた。
「幼い頃に父親が私に対して笑顔を向けてくれていた記憶がぼんやり残っているのですが、小学生になった頃には私のほうを一切見ない人になっていました。理由は、私がバカだったから、それに女だったからだと思います。親族で集まると、私の従兄弟に優秀な2歳下の男の子がいるんですが、父は酔っ払うといつもその子に『おじちゃんの家の子になったらいい』とご機嫌で誘っていました。父から、お前もこんな子どもなら良かったのに……、と遠回しに言われているような気持ちでした」
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