「あれ? なんて漢字だったっけ」と悩むことが多くなっていませんか? 少しだけ思い出す努力をしてみるものの、結局は「まあ、いいか」と諦めることもあったりして、記憶の衰えを実感することもあるのではないでしょうか? しかし、思い出すことが記憶力の鍛錬につながると言われています。
「脳トレ漢字」第153回は、「市井」をご紹介します。簡単な漢字のように思えますが、意外と読むのが難しい「市井」。昔の中国で生まれた言葉であると考えられています。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「市井」とは何とよむ?
「市井」の読み方をご存知でしょうか? 「いちい」「しい」と読んでしまいそうですが……
正解は……
「しせい」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「人が多く集まり住む所。まち。ちまた。」と説明されています。市中に住む庶民・一般人を表すこともある「市井」。「市井の人々」や「市井人」などのように使われます。また、古代では「市中に住むならず者・悪者」という意味として、「市井の徒(と)」という表現が使われていたそうです。
「徒」という漢字には、「いい加減」「不誠実」という意味が含まれているため、このような表現が生まれたと考えられます。
「市井」の漢字の由来は?
「市井」という言葉は、中国に由来すると考えられています。その昔、井戸のある場所に人々が集まり、一つの市が出来たそうです。そのため、人が多く居住する場所のことを、「市井」と呼ぶようになったと考えられています。
古代都市と井戸
先述の通り、「市井」は、井戸の周りに人が集まって市が成立したことから、誕生した言葉であると考えられています。「市井」という言葉が生まれた中国は、世界四大文明の一つである黄河文明が発展した国です。
四大文明が発展した最大の理由として、近くに大きな川が流れていたからということが挙げられます。作物を育てたり、移動したりするためには、川の近くに住んだ方が便利だったからです。井戸もまた、人が生活するためには欠かせない、大切なものでした。
日本でも、人の形に扮した神に供物を差し出すと、水が湧いてきて井戸が出来上がり、村が豊かになったという伝承が複数見られます。「市井」の由来にもある通り、井戸が出来たことで人が大勢集まって市が形成されるほど、当時の人々にとって、井戸は特別な存在だったのです。
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いかがでしたか? 今回の「市井」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 「市井」は、中国で生まれた言葉であるということがわかりました。井戸水は、災害時の非常用水として活用できるため、最近では防災用の井戸を設置する事例が増えているそうです。
近くで井戸を見かけた際には、「井戸が出来たことで、一つの町が出来た」という「市井」の語源を思い出してみてくださいね。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
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