最近、パソコンやスマートフォンの普及により、自ら字を書く機会はめっきり減少してきました。その影響からか「読める、けれども、いざ書こうとすると書けない漢字」が増えていませんか? 以前はすらすらと書けていたのに、と書く力が衰えたと実感することもあります。
実際に漢字の読み書きをすることで、脳のトレーニングとなります。また、この記事を通じて、読むこと・書くこと・漢字の意味を深く知り、漢字の能力を高く保つことにお役立てください。「脳トレ漢字」第140回は、「夜の帳」をご紹介します。
日が暮れてあたりがだんだんと薄暗くなっていく様子を、あるものに例えています。歌詞の一部に使用されることも多いです。言葉の意味を理解するとともに、漢字への造詣を深めてみてください。
「夜の帳」は何とよむ?
「夜の帳」の読み方をご存知でしょうか? 「帳」を「ちょう」と読んでしまいそうですが……
正解は……
「よるのとばり」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「夜の闇を、帳にたとえていう語」と説明されています。帳とは、室内を区切ったり、人目を遮ったりするために使われる垂れ布のことです。
「夜の帳が下りる」「夜の帳に包まれる」などのように使われることが多い言葉ですが、夜がだんだんと更けていく様子を、垂れ布が下りる様子に例えていることがわかります。
寝ている間の虫刺されを防止するために、蚊帳をつるして寝たことがあるという方も多いのではないでしょうか? 蚊帳という漢字にも、室内を区切るという意味として「帳」が使われています。また、平安時代以降の貴族は、目隠しや風よけとして「几帳(きちょう)」と呼ばれる仕切りを使用していました。
几帳の柱の表面を削って、角を丸くし、両側に切りこみを入れたものを「几帳面」と言いますが、この几帳面はかなり丁寧に作られていたため、きちんとしている人のことを几帳面と言うようになったのです。
「夜の帳」の漢字の由来は?
夜が更けていく様子を表す「夜の帳」。垂れ布という意味である「帳」を合わせることで、賑やかで明るい日中から時間が経ち、静かで暗く、若干の寂しさを感じる夜がゆっくりと訪れるという印象を抱かせる言葉になります。
「夜の帳」と似た意味を持つ表現
「夜の帳」と同じく、日が暮れて夜になっていく様子を表す言葉はほかにもあります。例えば、「火点し頃(ひともしごろ)」。だんだんとあたりが暗くなってきて、そろそろ明かりをともす時間であるという意味です。
また、古来より暗い夜は不吉であると考えられることが多かったため、昼から夜に移り変わる夕方の時間帯のことを「逢魔が時(おうまがとき)」、魔物に遭遇する時間帯と表現することもあります。
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いかがでしたか? 今回の「夜の帳」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 何度も聞いたことがある言葉ですが、いざ漢字を書こうとすると、意外と悩んでしまうかもしれません。改めて、漢字や言葉の意味について理解を深め、知識を定着させていきましょう。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
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