アイドル、舞台、スポーツなどにハマりこむ“推し活”にハマる人が増えている。
2022年10月、シンクタンクの矢野経済研究所は、「オタク」の主要14分野の市場規模を調査した『2022 クールジャパンマーケット/オタク市場の徹底研究 ~市場分析編~』を発表。それによると、全ジャンルをまとめると約7000億円程度の経済効果があるという。
絹子さん(56歳・会社員)は、コロナ禍中にある若手俳優にハマった。その人が出る作品をすべて観て、過去の雑誌のインタビューを読んだり、彼が生まれ育った街や出身小中学校を巡ったりしたという。そこで出会った久しぶりの親友・麻美さん(54歳)と、トラブルを抱えている。
遊びすぎて子供を産む時期を逃した
絹子さんには子供がいない。その俳優は「もし、子供がいたらこんな青年になっていたらいい」という理想像でもあった。
「私と夫の間に、あんなイケメンは生まれるわけもないんですが、“仮想息子”として、男としてドはまりしていました。私たち夫婦に子供がいないのは、遊び過ぎたから。私たちはバブル世代で、結婚当時、夫は広告代理店、私は商社の繊維部に勤務していてイケイケだったんです」
絹子さんも夫も東京23区内で生まれ育ち、実家も裕福だ。ともに上に2人のきょうだいがいる末っ子。甘やかされて育ったという。
「26歳のときにホテルで派手な結婚式をして、新婚旅行はニューカレドニアとフィレンツエでした。お互いに海外出張も多く、私はブランドのバイイングのアシスタントとして、ミラノ、パリ、ロンドンなどを飛び回っていました。夫はブラジルやペルーなど南米が多かった。当時の南米って日本のヘアカラーが人気らしくて、その市場開拓に行っていたようです」
浮ついている時代だったが、仕事に手を抜くことはしなかった。バブル崩壊後の平成不況で多くの人がリストラにあったが、絹子さんも夫も会社から慰留されたという。
「あのとき、年齢で区切られて全社員が肩たたきに遭ったんです。その面接の前に夫は役員に呼ばれ“制度上、退職をすすめなければならないけれど、絶対に辞めないでほしい”と頭を下げられたそうです。私はリストラ面談で、人事が世間話をするんです。私が“お子さんがいる人を残し、私を辞めさせてください”と言うと、“そんなことを言わないで、今は時間を潰してください”と返事が。でも私は人に誠意も愛もない会社にいても未来はないと思い、退職し、今の通販運営会社に転職しました」
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