転職先の通販会社は業績を伸ばし、生活は安定した。都心のマンションを購入し、投資用に川崎市内にマンションを3部屋所有している。その不動産からもたらされる利益は、月50万円以上だという。
「子供がいないから、億単位でかかる子育てにまつわる全費用を投資に投入できるんです。教育費の負担がニュースになっていますが、それこそ出産のコスト、子供の衣食住、水道光熱費や雑費を足すとその子が生まれてから独立するまで億単位の費用がかかると思う。それがないから夫婦で豊かに生活できるんだと思うんです」
お金の面では満たされている。経済的にも不安はないが、50歳を超えてから満たされない思いを抱えていたという。
「それまで、子供がいないことをなんとも思っていなかったんですが、いざ出産の可能性が潰えると、私の人生は消費で終わったのではないかと思うようになったんです。夫婦で消費をあおる仕事をして、自分自身もハイブランドの服やバッグ、家具などを買いまくった。ワインも食事もいいものを食べて、有名人とも親しくさせてもらっている。それなのにむなしいんです」
そんなときにコロナが襲い、自粛生活を余儀なくされたときに、若手俳優にハマった。
「この人は、私を始め様々な人に喜びを与えていると思ったんです。イベントなどに行くようになって出会ったのは、久しぶりにできた親友の麻美さんです。舞台あいさつなどの追っかけ活動で顔を合わせるようになり、年齢が近いことからも自然に話していました。偶然、家も近くて、この2年間は麻美さんと“密”に過ごしたのです」
絹子さんが麻美さんを「久しぶりの親友」と愛おしそうに言った。
「私、たくさんの親友に囲まれていたんです。でも、彼女たちの会話の中心が子育てになった。私は興味もないし、つまらない。大人が集まるときに子供の話はしないでほしいと言ったんです。そのうちに距離を置かれ、それから一切、話していません」
孤独な心にしみこんできた親友は、家庭の中にも入りこんだ。
【他人の夫を奪いたがる恋愛嗜好の女性の手口……その2に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。