資産をどう築き その価値をいかに守るか
「人生100年時代」を豊かに生きるためにも、お金の不安は払拭しておきたい。その有効な手段のひとつとされるのが投資だ。目先の損得勘定にとらわれず、長期的な視点での実践を考えたい。
【第1講】必要な資金の目途を立てる
「お金の知識を身に付けながら、老後資金を積み上げましょう」
私たちを取り巻く生活環境が刻々と変わり始めている。過去に例を見ない速度で円安と物価高が進行し、家計を圧迫しているのだ。10月の東京都区部の消費者物価指数は前年同月比でプラス3.4%を記録。消費増税の影響を除くとバブル期のピークよりも高い40年ぶりの上昇率となり、今後もさらなる上昇が見込まれる。
円安や物価高が続く状況に、私たちはどう向き合うべきか。
政府の社会保障審議会の委員を務め、年金事情にも詳しいファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんは、「冷静にマネープランを見直すことが大事」と語る。
「不安に駆られ、理解不足のまま投資を始めてしまうと、思わぬ損失をこうむる可能性があります。まずは、自分の資産の中身を把握し、それを踏まえた上で、何歳まで働くのか、いつ年金を受け取るかといったプランを、大雑把でもよいので立てておきましょう。投資を検討するのは、その後でも構いません」(井戸さん。以下同)
仕事を続けることを優先する
井戸さんは、マネープランを立てる上で、世代別にやるべきことのポイントは異なるという。主な項目は以下に掲げた通りだ。
例えば、40代は老後の準備を意識する程度で充分。もしマイホームを購入するなら、定年前に完済できるようローンを組む。50代なら、余裕資金を貯蓄や投資にまわし、退職金の活用法を考え、老後資金作りを本格化させる。
60代は、なるべく仕事を続けて収入の確保を優先し、年金を受け取る年齢を考える。
70代は、仕事や資産の中身を見直して、80代以降の過ごし方をイメージする。
「定年を迎える60代以降、とくに重要になってくるのは、どのような雇用形態でもいいので、なるべく長く働いて収入を得続けることです。年金は原則65歳から支給されますが、支給開始年齢を後ろにずらすと、その分、年金額を増やせます。支給開始時期を遅らせることができれば、老後の不安はかなり解消されるはずです。ここに挙げた項目をこなすだけでも、お金の知識を身に付けながら、老後資金を積み上げられるでしょう」
人生100年時代は、70代から投資を始めても遅くない。老後に起きることを想定し、それに備えておくことが、経済や社会の変化から生活を守ることにつながる。
※この記事は『サライ』2023年1月号より転載しました。