一年で最も昼が短くなる「冬至」(とうじ)。厳しい寒さの始まりを告げるこの節気には、南瓜(かぼちゃ)や柚子湯などの風習が今も受け継がれています。古来の人々はこの日を「陰が極まり陽に転ずる」と捉え、幸運の兆しとしました。

そんな冬至の意味や由来、暮らしに生かせる旬の食材や植物、行事などを通して、日本の冬の美しさと知恵を再発見してみませんか?

さて今回は、旧暦の第22番目の節気「冬至」(とうじ)について下鴨神社京都学問所研究員である新木直安氏に紐解いていただきました。

冬至とは?

2025年の「冬至」は、【12月22日(月)】にあたります。「冬に至る」と書くこの日は、一年で最も昼が短く、夜が長い日として知られています。

この日を境に、太陽の出ている時間が少しずつ長くなっていくことから、古来中国の陰陽五行思想では「一陽来復」(いちようらいふく)という吉兆の言葉で表現されてきました。

現代でもこの思想は息づいており、陰(不運)が極まったあとに陽(幸運)が訪れる転換点と捉え、冬至を新たな運気の始まりとして大切にする風習も見られます。

京都の寺社では、冬至の頃に合わせて行われる神事や祭礼が残っており、人々はこの日を境に新年への準備を始めていきます。厳しい寒さのただ中にありながら、春へのわずかな兆しが感じられる……それが冬至なのです。

七十二候で感じる冬至の息吹

冬至の期間は、例年【12月22日ごろ〜1月4日ごろ】。七十二候ではこの時期をさらに三つに分け、自然の細やかな変化を映し出しています。

初候(12月22日〜26日頃)|乃東生(なつかれくさしょうず)

うつぼぐさが芽を出す頃。

次候(12月27日〜31日頃)|麋角解(さわしかのつのおつる)

大鹿の角が落ちて生え変わる頃。

末候(1月1日〜4日頃)|雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる)

雪の下で、麦が芽を出す頃。

冬至を感じる和歌|言葉に映る冬至の情景

皆さま、こんにちは。絵本作家のまつしたゆうりです。そろそろ柚子湯の季節。今月は奈良時代の柑橘類として有名な植物の登場する、この歌をご紹介します。

我が宿の 花橘は 散り過ぎて 玉に貫くべく 実になりにけり 
大伴家持(おおとものやかもち)『万葉集』1489

《訳》私の家の庭の橘の花は、散って盛りを過ぎてしまって、薬玉に貫くための実になった。

《詠み人》この歌は、『万葉集』を編纂したと言われている大伴家持が詠んだ歌です。貴族で歌人でもある彼は、心の機微を自然に喩えた歌をたくさん残しています。

絵/まつしたゆうり

濃い緑色の葉に白い五弁の花、黄色い小さな実をつける橘は、お雛様のひな壇の飾り付けで桜とともに飾った記憶がある人も多いでしょう。

その時くらいしか現代では馴染みがないかもしれませんが、奈良時代にはメジャーな柑橘類だったようで、よくいろんな歌人の歌に登場します。

常緑樹で、夏はいい香りの白い花を付け、冬には黄色く香り高い実を付けるゆえか、庭木としても重宝されていたよう。

この歌では自分の家の庭の橘の、季節の変化を詠っています。

夏の初めの立夏の頃、五月五日の節句の日に薬玉にする時の飾り付けの実になる。それを楽しみにする何気ない日常が、微笑ましい一首です。

何かが変化して、無くなってしまうことに恐れや悲しみを感じる方は多いかと思います。

大好きな物、大好きな人、大好きな町。

「ずっと変わらないでいてほしい」「無くならないでほしい」と思っても、いつの間にか見知った景色ではなくなり、他者は変わり、自分も変わり、大好きだったものも色褪せて見えたりする。

それをマイナスに思うのは、「今」に目を向けていないからなのかもしれません。変わったからこそ気付くこと、無くなったからこそ得られるものもあるのに、変わる前、無くなる前にフォーカスを当て続ける限り、新しい今を得ることができない。

どんな物事でも、変わること、無くなることは避けられないもの。

だからこそ、それを受け入れ、その余白に新しいものが入ってくるのだと楽しむ方がずっと楽しくいられると思うのです。

この歌も、「花が散ったからこそ、実が成る」と歌っている。日本は四季があるからこそ、常に変化し続けることが身近に思います。

四季の変化は「そういうもの」だと思っているから、受け入れて、楽しめる。

人生は一度きりで同じ時は巡ってきませんが、だからこそこの1回きりを楽しんで、新しく訪れるものをまためいっぱい楽しんでいけたらいいなと思うこの頃です。皆さまの身近にある変化は、どんなことですか? 過ぎ去る花を手放して、実る果実を味わわれますよう。

「冬至を感じる和歌」文/まつしたゆうり

冬至に行われる行事|再生と祓いの風習

神宮(伊勢の神宮)では、冬至の前後1か月間、内宮宇治橋と鳥居のまん中から朝日が昇ります。「宇治橋の日の出」の愛称を持つこの頃の日の出は、大鳥居の間をゆっくりと昇っていくのです。冬至の日の前後では、そんな神々しい光景を写真に収めようと、カメラを構えた人たちで賑わいます。

柚子湯

冬至の日に行われる風習といえば「柚子湯」です。日本各地で「この日に柚子湯に入れば風邪を引かない」という言い伝えが残っており、これは「禊」(みそぎ、川や海の水で身体を洗い清めること)のなごりかと考えられています。つまり、鮮烈な柚子の香りとともに熱いお湯に浸かることで、厄を払い、体を清める意味合いがあったということです。

黄色い柚子がぷかぷかと湯船に浮かんだ光景は、冬ならではといえるのではないでしょうか。

南瓜

冬至の日に南瓜を食べると風邪を引かない、病気にならないとする言い伝えもあります。なぜ南瓜なのでしょうか?

一説によると、夏の野菜であるかぼちゃは、冬には珍しいため、祭りの神供として考えられていたからです。野菜の乏しい冬の時期に行う祭りの供え物という意味があったとされます。それが今も伝わり、冬に至る冬至の縁起物としてかぼちゃが食べられているのです。

このほか、京都寺社仏閣では「大根焚き」(だいこだき)が行なわれます。古くから諸病除けにいいと信じられています。

冬至に見頃を迎える花|静かな冬に咲く彩の命

寒さが深まる冬至の頃、草木は多くが眠りにつく中で、凛とした美しさを見せる花々もあります。静けさの中に凛と咲く冬の花は、儚(はかな)くも強い生命力を感じさせてくれます。ここでは、冬至の時期に見頃を迎える代表的な花をご紹介します。

蝋梅(ろうばい)

花の少ない厳寒期、甘い香りを届けてくれる「蝋梅」(ろうばい)。茶花としても重宝される、冬の風情です。

葉を落とした裸木の枝に、蝋細工のような半透明の黄色い花を咲かせる様子は、凛とした静寂のなかにやさしい光を灯してくれるかのよう。中国原産の植物で、日本には江戸時代初期に渡来しました。

蝋梅

千両(せんりょう)、万両(まんりょう)

お正月の縁起物として親しまれてきた「千両」と「万両」。いずれも赤い実をつけ、冬の庭や床の間を華やかに彩ります。

「千両」は夏に黄緑色の小花を咲かせ、冬にかけて赤い実が熟します。葉の上に実をつけるのが特徴で、庭木や正月飾りに広く用いられます。

一方、「万両」は夏に白い小花を房状に咲かせ、赤い実を葉の下にたわわに実らせます。その実は春先まで残り、冬枯れの庭に彩りを添えます。

その名から「金運」を象徴する縁起木とされ、新年の福を願う飾りとしても愛されてきました。

万両

冬至の味覚|旬を味わい、季節を身体に取り込む

体調を崩しやすい時期だからこそ、旬の味覚を取り入れ、身体を内側から整えたいもの。古くから伝わる食の風習や、冬に美味しさが増す食材には、自然の理にかなった知恵が詰まっています。

ここでは、冬至の時期に味わいたい野菜、魚、京菓子をご紹介します。

野菜|南瓜

「冬至に南瓜を食べると風邪をひかない」。そんな言い伝えとともに、南瓜は冬至の食卓に欠かせない存在です。収穫は夏でも、数か月の追熟を経て甘みと栄養価が増し、冬が最も美味。βカロテン(体内でビタミンAに変化)を多く含み、免疫力を高める働きもあります。

南瓜は冬に不足しがちな栄養を補い、季節の変わり目を健やかに過ごすための「自然の薬膳」ともいえるでしょう。

南瓜ぜんざい

魚|金目鯛(きんめだい)

冬に美味しさを増す魚のひとつが金目鯛です。名前に「鯛」とありますが、実は深海に棲む別種。目が金色に光って見えることからこの名がつきました。

脂のりのいい白身は、煮付けや塩焼き、鍋、刺身など、どんな調理にも映える万能魚。ふっくらした身と上質な旨みが、冬の食卓を豊かに彩ります。

京菓子|冬支度(ふゆじたく)

京都の冬の風物詩「聖護院かぶら」に着想を得た生菓子が「冬支度」です。下鴨神社に神饌を納める〈宝泉堂〉では、この時期、聖護院かぶらを模した写実的な和菓子を供します。

つくね芋をすりおろし、砂糖と上用粉を合わせた生地でこし餡を包み、蒸し上げた後、筆で青味を彩色。焼き目や茎を添え、かぶらに見立てます。

やさしい甘みと、しっとりとした口当たりが、寒さの中にあたたかさを届けてくれる逸品です。

「冬支度」
写真提供/宝泉堂

まとめ

一年で一番長い夜を迎える「冬至」。この夜を越えれば、次第に夜は短くなり、太陽が出ている時間が長くなります。季節は再び、春に向かって進み始めるのです。このように「冬至」は季節の上で節目となる節気であると同時に、暦の上でも一年が終わり、次の年を迎える時期にあたります。

季節ならではの食材を食べ、健康に過ごすことで、いい年末年始を迎えましょう。

●「和歌」部分執筆・絵/まつしたゆうり

絵本作家、イラストレーター。「心が旅する扉を描く」をテーマに柔らかで色彩豊かな作品を作る。共著『よみたい万葉集』(2015年/西日本出版社)、絵本『シマフクロウのかみさまがうたったはなし』(2014年/(公財)アイヌ文化財団)など。WEBサイト:https://www.yuuli.net/ インスタグラム:https://www.instagram.com/yuuli_official/

監修/新木直安(下鴨神社京都学問所研究員) HP:https://www.shimogamo-jinja.or.jp
協力/宝泉堂 古田三哉子 HP:https://housendo.com 
インスタグラム:https://instagram.com/housendo.kyoto
構成/菅原喜子(京都メディアライン)HP:https://kyotomedialine.com Facebook

 

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