健康に気を遣って食事を変えたいと思いながらも、体にいい食事は「味気ない」「物足りない」というイメージがあって、どうにも気が進まないという方も多いのではないでしょうか?
でもじつは、そんな方にとって福音となるであろう “体に良くて、しかも美味しい”を両立させる新しい食のスタイルがあります。それが「ケアリングフード」です。
『サライ.jp』では、今回から5回にわたって、この「ケアリングフード」の提唱者である藤春幸治(ふじはる・こうじ)シェフによる特別レクチャーをお届けします。
藤春さんは、東京・元麻布にあるレストラン『エピキュール』のオーナーシェフ。これまで都内のフレンチやイタリアンのレストラン、有名外資系ホテル、海外にて料理の腕を磨いてきた一流シェフです。
医師でも、管理栄養士でもなく、トップシェフが考案した「ケアリングフード」とは、いったいどんなものなのでしょうか? さっそく藤春シェフにお話を伺っていきましょう。
■食事制限が必要な人も、すべての人が一緒に楽しめる食事「ケアリングフード」
はじめまして、藤春です。私は、一般的な食習慣の方はもちろん、食事制限されている方も、個食理念を持たれている方も、みんなが同じ食卓を囲めるようにとの思いで、「ケアリングフード」のレストラン『エピキュール』を開きました。
「ケアリングフード」というのは、糖質コントロールや、グルテンフリー、アンチエイジングなど、食に関するひとりひとりの考え方に寄り添いながら、みんなが同じ食卓で美味しく食べたいものを召し上がっていただけるための調理法であり、体にとって最高・最善の食材を選ぶ基準です。
例えば、私のレストランでは、食材は生産者や生産過程のはっきりしたものを使っていますし、添加物、化学調味料、人工甘味料等は全く使用していません。ちなみに、トレーサビリティ(生産過程の追跡可能性)がはっきりしていれば、健康面で安心なだけでなく、食材に関して様々な理念を持った方にも対応できます。
ひとりひとりのニーズや理念に合せるために、作り手は栄養学や食文化について広く知る必要があります。その上で、トレーサビリティや成分を考慮した食材を選ばなければなりません。
私の店では、こうした確かな食材を使って、低カロリー、低糖質、低塩分で、必須脂肪酸や抗酸化作用、食物繊維、たんぱく質のバランスを重視し、油や砂糖、塩を極力使わないようにしながらも、美味しく調理して提供しています。
……と、こう聞くと、ケアリングフードはとっても難しいものに感じられるかもしれませんが、基本の考え方さえ理解していただければ、ご家庭でも実践できることがたくさんあります。以下に具体的にお教えしましょう!
■「ケアリングフード」なら美味しさそのままカロリーを半分以下に抑えられる
例えば、豚フィレのポークジンジャーで比較してみましょう。
一般的なレシピのカロリーは460kcal。一方、ケアリングフードの技法で作ればカロリーはたった187kcalまで抑えられます。
さらに、砂糖や日本酒を使っていないので糖質量も約50%カットできるんです。日本酒の替わりに蒸留酒である焼酎を使うため、糖質をカットしながら味や香りはそのままです。
さらに、だし汁で旨みを加えることで減塩しています。また、油は敷きませんが、少量の片栗粉でとろみをつけているのでパサパサつかずしっとり仕上がります。
このように、ケアリングフードの基準で食材や調味料を選び、その技法で調理することで、同じメニューでも美味しさはそのままに、体により良い食事に変えることができます。
一般的なレシピは、砂糖、日本酒、塩、油と足し算式ですが、ケアリングフードは引き算で、”体に良くて、しかも美味しい食事”を実現しています。
このレシピは、私の著書でも紹介しています。ご家庭でも簡単にできるものばかりを紹介しているので、ぜひ参照いただきたいです。
■毎日食べなくてもOK!ケアリングフードはゆるく楽しみながら続けましょう!
ただし、体に良いからと「ケアリングフードを毎日食べなければいけない」ということではありません。義務感がストレスになってやめてしまうくらいなら、「今日のお昼は大好きなラーメンを食べよう」というのもありだと思います。その代わり、昼にラーメンを食べたら、夜はケアリングフードにするなど、バランスを考えて上手に取り入れてほしいのです。
また、4人で食事をするならケアリングフードを3品並べて、他は餃子でも天ぷらでも、好きなものを囲むという取り入れ方もいいです。それでも、全体のカロリーや糖質の摂取量は落とせますし、栄養の偏りも防げます。
とはいえ、ケアリングフードの条件を満たした料理をご家庭で作るのは大変ではありますので、手軽にケアリングフードを取り入れていただけるよう冷凍食品やおせち料理も開発しています。ケアリングフードは保存料など添加物を使わないため、冷凍食品で出さざるを得ないのです。
ケアリングフードというのは、あれはダメ、これはダメ、というような、いわゆる「制限食」ではありません。みんなが同じテーブルを囲んで食事を楽しもうという、新しい食のスタイルなんです。
だから、ぜひ楽しみながら、無理をせずご自分のペースで、美味しく健康的な料理を実践していただきたいですね。そのための基本となる考え方について、これから数回にわたってお伝えしてければと考えています。
【藤春幸治シェフ プロフィール】
東京・元麻布「エピキュール」オーナーシェフ。日本における「ケアリングフード」の創案者。フレンチやイタリアンのレストラン、有名外資系ホテル、海外にて研鑽を積み、2014年にケアリングフードを提供するレストラン『エピキュール』をオープン。医師やトップアスリート、芸能人などからも支持を集めており、糖尿病や癌の患者など、様々な人への食事サポートの実績をもつ。著書に『あなたのカラダが21日で変わる「ケアリングフード」レシピ』(講談社)がある。家庭の食卓でも手軽にケアリングフードを取り入れられる冷凍食品『ヒルズ・エピキュール』やおせち料理の監修にも携わっている。
取材・文/小野寺佑子
【エピキュール藤春シェフのケアリングフード講座】
※ 常識を覆す美味なる健康食!「ケアリングフード」とはいったい何か【第1回】
※ お米は悪者じゃない!知っておきたい糖質コントロールの極意【第2回】
※ 知っておきたい!「食用油」の上手な摂り方・使い方の秘訣【第3回】
※ ロコモやサルコペニア対策にも!ケアリングフード的「たんぱく質の上手な摂り方」とは?【第4回】
※ 味噌選びは「塩」選び!塩分摂取を抑えて美味しく仕上げる発酵調味料の知恵【第5回】
【お知らせ】藤春シェフが自ら「ケアリングフード」の考えを語る料理サロン&試食会が開催されます。詳しくは下記記事をご覧ください。
https://serai.jp/gourmet/120275